近未来に各銀行の独自デジタル通貨が標準化されたり統合されたりすれば、
その利用が相互に広がっていくことが期待できます。
しかし残念なことに、銀行デジタル通貨を利用したスマートフォン決済が
店頭での支払い等の現金決済の多くと代替され、資金決済全体を支配するような
地位を築く事は、当分の間は起こりそうにありません。
他の仮想通貨や後述する第三者オンラインプラットフォームを介したモバイル決済も同じです。
それには、3つの壁があるからです。
第一の壁は、スマートフォン自体の普及が充分でないこと、持っていてもITリテラシー
(理解度)が低い人が多いこと、安全性や個人情報に対する不安が大きいことです。
スマートフォンの普及は中若年層までに留まり、高齢層には広がっていません。
また、日本人のITリテラシーは相乗想像以上に低く、
スマートフォンを持っていても十分にその機能を使いこなすことができない人が少なくありません。
日本人には、安全性や個人情報の流出利用に対して極めて敏感であると言う国民性もあります。
それらの要因がスマートフォン決済の普及の制約になる可能性は高いと思われます。
第二は、日本人の現金志向です。
第4章に詳述しますが、店頭での支払い等小口決済に占める現金利用の比率や、
現金発行額のGDP比率が主要国の中で突出しているのが日本です。
日本人の現金への親和性が、デジタル通貨の利用やスマートフォン決済の
普及の壁となる可能性は非常に高いと思われます。
第3は、キャッシュレス社会を実現させるためのコストです。
民間銀行が発行するデジタル通貨を社会によく利用される社会インフラとするためには、
すべての人がそこから排除されないようにしなければなりません。
スマートフォンを持っていなかったり、使い方がわからない人が買い物をしたり
電車に乗ったりできなくなるようなことは、あってはならないからです。
そうした考えを「金融包摂」と言います。
そのためには、相当なコストが必要です。
しかし、厳しい自然環境の下にある日本の銀行に、大きなコストをもって
社会的な役割を十分に果たす体力はなさそうです。
このように、3つの壁に阻まれて、日本でスマート決済が社会インフラとなる日は
そう近くはないと思われます。
さて、3つの壁については、後に詳細に検討することにして、
次節では、日本では普及してないスマートフォン決済が諸外国で
どのように広がっていったのかを見てみることにします。
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