【米中もし戦わば】043-03、中国の司令官は北京の指示がなければ動けない

それでは、もっと簡単に、さらに比較的安価に対処できる弱点から見ていこう。

 それは、固定されたソフトターゲットつまりアジアのアメリカ軍基地のことである。 

すでに述べたように、第一に基地の「強化」が必要である。

これは、燃料タンクや兵器庫を地下深部に移動させる、航空機をサイロに格納する、

膨大な量のコンクリートと鉄筋で滑走路や建物を要塞化する、といった方法によって

実行できる。

同時に、この「基地=ソフトターゲット」問題解決のためには、現在グアムや

沖縄の嘉手納基地などに集中しているアメリカのアジア中に点在する

ずっと小規模の基地に分散する必要がある。

この分散・多様化戦略の目標は、ターゲットを絞り込みにくくすることである。

基地と同じように、人工衛星資産も「強化」する必要がある。

基地の多様化と同じ意味で、宇宙通信中継点の数を大幅に増やし、

そのサイズを縮小する必要がある。

このような宇宙資産の多様化は、「キューブリック」と呼ばれる小型衛星や

高高度気球や、近年急速に普及したドローンなど様々な新技術によって

比較的簡単かつ安価に実現することができる。

しかし、結局のところ、通信能力を確保するための最良の方法は、

人工衛星に全く依存しない代理機能システムを構築することかもしれない。

具体的には、これは、紛争が勃発した際には水上捜索レーダーや高周波無線機といった

昔ながらの技術を使って通信を行えるようにしておくと言うことである。

人工衛星資産について最後に指摘しておきたいのは、アメリカはほぼ間違いなく、

中国の人工衛星ネットワーク撃墜を目的とする対人工衛星兵器の開発を

さらに進めなくてはならなくなるだろうと言うことである。

これは、軍拡競争の観点から残念ながら避けがたいことである。

戦略上興味深いのは、アメリカ軍の衛星通信依存度が高まるにつれて、

将来的には中国の方がさらにその依存度が高くなるかもしれないと言うことである。

その原因は、中国の中央集権化された指揮統制体制にあると言えるかもしれない。

このような集中化は、中国の独裁的政治体制の副産物である。

中国はアメリカ軍の司令官が航海上や上空で通常有しているような分権的裁量権を

軍司令官に与えることを毛嫌いする。

中国軍の司令官が細かい事まで北京の指示を仰がなければならないことを考えると、

もしアメリカが紛争時に衛星通信の主要中継点を見つけてこれを破壊することができれば、

より迅速に中国にダメージを与えたり麻痺させることができるかもしれない。 

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