2017年2月10日安倍晋三首相は就任したばかりのドナルド・トランプ大統領との
日米首脳会談に臨みました。
会談前、日本側には、いくつかの懸念事項がありました。
中でも最大の懸念は、それまでのトランプ大統領の言動からして、
日米同盟の見直しは迫ってくるのではないかと言うことでした。
そのため、日本側はトランプ大統領に「尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲である」と
明言させることに注力したようです。
その結果について、日本のメディアは、日米首脳会談の結果を「予想以上の大成功」と
伝えました。
トランプ大統領は、記者会見の冒頭で(メモを見ながら)、「私たちは日本と
その施政下にあるすべての領土に対する安全保障に関与し、
両国の極めて重要な同盟関係をより強化する」と述べたのです。
これを受けて安倍首相は、「安全保障環境が厳しさを増す中にあって、
尖閣諸島が安保条約第五条の対象であることを確認しました。
米国は地域におけるプレゼンスを強化し、日本も積極的平和主義のもと、
より大きな役割を果たしていく考えです」と続けたのです。
また、その後に発表された共同声明にもこの内容は盛り込まれ、
これは尖閣諸島を日米安保の適用範囲とするアメリカの見解が初めて文書化されたことを
意味しました。
すでに、オバマ前大統領も2014年4月9日に、同様の声明を出しています。
しかし、オバマ前大統領の実行力には不安が残りました。
したがって、トランプ大統領は、明確に日本防衛を打ち出し、
それが共同声明に盛り込まれたとは、日本にとって、1つの大きな成果と言えるでしょう
と言うのは、2014年時点に比べて、日中関係は冷え込み、
尖閣諸島めぐる情勢は大幅に悪化しているからです。
中国は、第3章で詳しく説明する「サラミスライス戦術」、「キャベツ戦術」を
着々と進めて尖閣諸島周辺の接続水域に公船を送り込み、領海の侵入を繰り返し、
2016年に初めて軍艦まで派遣してきているからです。
さらに、尖閣諸島を含むシナ海の上空に勝手に「防空識別圏」を設定し、
中国空軍機は毎日のように領空侵犯スレスレの飛行を繰り返すようになってきているのです。
こうした中国の示威行動に対して、少しでも歯止めをかけられるのは、
アメリカ以外にはありません。
そのアメリカ、特にトランプ大統領から決意が聞けたのですから、
ひとまず重要な第一歩を踏み出すことができたと言えるでしょう。
しかし問題はこれからです。
なぜなら、尖閣諸島を守ってくれるからといって、その状況に甘んじているわかりでは、
本当の意味で日本の防衛を全うできると断言できないからです。
いくら日米同盟が盤石で、尖閣諸島は日米安保の適用範囲とアメリカが言っても、
それが実際に適用されるかどうかは、その時が来てみなければわかりません。
この不安は、常に私たちにつきまとうのです。
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