このような記事の論旨を「パラドックス・オブ・コミットメント」と呼びます。
関与する事は逆効果になる、中国側がアメリカ政府に警告しているわけです。
中国は、アメリカが同盟国にコミットメントすることを極力阻止したいわけです。
日本のような同盟国にあまり肩入れしすぎない方がいい。
さもないと、中国との全面戦争に巻き込まれることになる。
それはアメリカの国益に決してプラスにならないと言いたいわけです。
このメッセージは、もちろん、オバマ政権の時のものです。
したがって、政権が変わり、「アメリカ第一主義」と事あるごとに言っている
トランプ大統領が、今後このようなメッセージに接したとき、
それをどう受け止めるかはよく推測の域を出ません。
日米首脳会談では、「日本とその施政下にあるすべての領土を守る」と述べ、
「尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲である」をしたトランプ大統領ですが、
それが彼の本音とは限りません。
アメリカ人のほとんどが、尖閣諸島の事など知りません。
それが、島と言うより「人が住まない岩だらけの不毛な小島」
と知らされれば、誰もが「そんなところを守るために米軍を出動させる必要があるのか」
と言うに決まっているでしょう。
アメリカは、戦争するかしないかは議会が決めます。
あの第一次大戦時、英国のチャーチル首相がルーズベルト大統領にいくら参戦を懇願しても、
大統領は首を縦に振りませんでした。
議会が認めなかったからです。
アメリカはナチスドイツと戦端を開いたのは、日本が真珠湾を攻撃したからであり、
しかもその4日後にナチスドイツが仕方なくアメリカに宣戦布告したからです。
つまり、いくら同盟関係にあるからとは言え、歴史を振り返れば
同盟国の戦争に参戦するかどうか分からないのです。
さらに言えば、同盟国の戦争に自動的に参戦した例はほとんどありません。
例えば、1982年、南大西洋上のフォークランド諸島の領有をめぐって争われた
英国とアルゼンチンとの戦争では、アルゼンチンが「米州相互防衛条約」に
入っているにもかかわらず、アメリカは集団的自衛権を行使して参戦する事はありませんでした。
このフォークランド戦争は、第二次世界大戦後に、英国とアルゼンチンの正規軍同士が
衝突した最初の本格的な戦争でした。
大英帝国が絶頂時代の19世紀、英国の宰相を務めたパーマストン卿
ヘンリー・ジョン・テンプルは、次のように言っています。
「国家には永遠の友も同盟国もない。あるのは永遠の国益だけだ」中国は
台湾、南シナ海のみならず尖閣諸島も「核心的利益」として、領有権に関しては
一歩もひく気配はありません。
尖閣諸島を自国領とする主張を変える事は永遠にないのです。
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