第3章中国-「海洋大国」「世界帝国」の野望【「強中国夢」、「失地回復主義」、「戦略辺疆論」】

本書では、中国のどのような国家目標を掲げ、

覇権的拡張戦略を進めているのかについて、掘り下げて説明していきます。

現在の中国の国家目標は、「強中国夢」(強い中国になると言う夢)です。

序章で説明したように「中華民族の偉大なる復興」を果たすことです。

その構成要素となるのが「漢民族中心の国家建設」と「富強(富国強兵)大国の建設」で、

これらは「強国の夢」「強軍の夢」と呼ばれ、

強大な海洋国家(シーパワー)、そしてアメリカを超える世界帝国への建設へとつながっています。

したがって、世界最大のシーパワーであり、現在の世界派遣国であるアメリカとは

宿命的にぶつかります。

 そのため、オバマ前大統領は対応に苦慮し、中国に対して明確なスタンスを示さないまま

任期を終えました。

 そして、今トランプ大統領は、「偉大なるアメリカの復活

「make America great again」を考えています。

 と言う事は、習近平主席の「強中国夢」は、トランプ大統領の政策と

激しくぶつかることになります。

 よく「国家100年の計」と言いますが、日本にはそれがないと誰もが言うでしょう。

 しかし、中国にはそれがあるのです「強中国夢」は、100年計画です。

つまり、中華人民共和国が建設された1949年から100年後の2049年が最終目標(ゴール)

となっているのです。

 その前に、節目となる中国共産党創設100周年の2021年がやってきます。

 この年を「中間目標」として、ここでアメリカに経済力で追いつき、

2049年にアメリカを超える世界帝国になるのが最終目標です。

中国には、「漢民族が過去に支配した地域はすべて中国の領土あるいは版図である」と

言う「失地回復主義」があります。

 彼らが回復しようと考えている地域は北は樺太や沿海州、西はネパールやブータン、

西北大地(現在のカザフスタン、キルギスタン、タジキスタンの一部)、

南はタイやビルマ(ミャンマー)、カンボジアといった東南アジアの国々まで

及んでいます。

 そして東は朝鮮半島、台湾はもとより、琉球諸島(沖縄)も、

中国は「帝国主義によって奪われた領土」としているのです。

さらに中国は、「総合国力の増減によって国境が可動する」と言う

「戦略的辺疆(国境)論」を唱えています。

 国境と言うのは文字通り国の境目ですが、辺彊は境界に接した僻地を意味します。

 中央から遠く離れた僻地を支配下に置くことで、中国は外敵から中央を守ってきました。

 これは、中華王朝の時代から続いてきた伝統的な考え方でもあります。

 ここまでは問題はありません。

しかし問題は、中国側が「国家としての総合力が高ければ、

辺彊をどこまでも拡げても良い」と考えていることです。

現在の中国は、国力が伸張し続けていますそのため、中国は戦略的辺彊論の考えに基づき、

これまでの国境線を越えて他国を支配下、影響下に置こうとしているのです。

 中国が東シナ海や南シナ海に進出し、度が過ぎた行為をしても罪の意識を感じていないのは、

こうした伝統的な考え方が根底にあるからと言うほかありません。

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第3章中国-「海洋大国」「世界帝国」の野望【「強中国夢」、「失地回復主義」、「戦略辺疆論」】


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