中国にとって、第一列島線は、視覚的に重要な海域です。
中国の海は、北の図們江から東南の沿海部は日本や韓国、北朝鮮によって
取り囲まれており、南の沿海部とその海域には台湾、フィリピン、マレーシア、
シンガポール、インドネシア、ベトナムなどがあり、
すべてを周辺隣国の列島に包囲されています。
これは、大きなハードルが横たわっているのと同じで、
この不利を克服しなければ太平洋やインド洋への海洋進出を果たせないのです。
そこで、まずは自分の“庭“とか第一列島線内の海域支配を狙っているのです。
ただし、第一列島線は日本やアメリカにとっても重要なラインです。
明治初期に外務省顧問となったアメリカのリゼンドル退役少将は、
1874年の台湾出兵に際して、「北樺太より南は台湾に至る1連の列島を領有して、
支那大陸半月形に包囲し、さらに朝鮮と満洲の足場を持つにあらざれば、
帝国(日本)の安全を保障し、東亜の時局を制御することができぬ」建言しています。
この地政学的な安全保障観は、その後の日本の外交・国防政策の基本となり、
現在でも生き続けていると言って良いでしょう。
仮に中国が台湾を制したり、南西諸島に足場を固めたりすることがあれば、
日本は極めて深刻な事態に見舞われることになります。
そのため日本にとっても第一列島線は死活的に重要なラインなのです。
また日米安全保障条約の「生みの親」とされるジョン・フォスター・ダレス国務長官は、
第一列島線の重要性について次のように次のように言及しています。
「アリューシャン列島につながる「鎖」-日本、韓国、琉球(沖縄)、台湾・膨湖諸島、
フィリピン、東南アジアの1部の地域、及びオーストラリア、ニュージーランドは、
中国大陸を囲むようにしてつながっており、この「鎖」こそ、
太平洋地域の安全保障上不可欠なのである」つまり、
アメリカもまた第一列島線を軸にして、東アジアの安全保障体制を構築してきたのです。
しかしながら、中国から見て、この「障壁」は、逆に「防壁」としての機能も
併せ持つことにも注目しなければなりません。
この観点から中国の防衛政策は、前述したように、第一列島線を「最終抵抗ライン」
第二列島線を「遠海防御ライン」とすることで成り立っています。
第一列島線の内側では、「近海行動防御作戦」が実行され、
第二列島線までの海域では前方防御海域とする「遠海防御作戦」が行われることになっています。
では、中国は、この二つの海域で、具体的には何をしようとしているのでしょうか?
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