「エアシーバトル構想」と同じように注目されるのが、「第三次相殺戦略」です。
この戦略は、CS BAのロバート・マーティネズ元海軍省次官が発表した論文が発端です。
2014年11月、当時のヘーゲル国防長官が発表した「国防イノベーション構想」(DII)、
すなわち「アメリカが長期的に優勢を維持する方策を追求する構想」と
つながっているとみられています。
「相殺戦略」と言うのは、技術上及び軍事作戦上の優位性を保持して、
敵の能力を「相殺」(抑止ないしは無効」するというものです。
つまり、敵を上回る技術・武器でオフセットするわけです。
「第3」がつくのですから「第一」も「第二」もあります。
「第一次相殺戦略」は、1950年代のアイゼンハワー大統領による「ニュー・ルック」と
言われる核による大量報復戦略です。
そして「第二次相殺戦略」は、1970年代末~80年代のハロルドブラウン国防長官が
提唱した通常戦力の質的優越です。
具体的には、ステルス爆撃機のF-1178やB-2、精密攻撃兵器、
改善型C4ISRなどのことです。
では「第3相殺戦略」では、中国に対してどんな点で優位性を保とうとするのでしょうか?ここでは、次の5項目が提示されています。
①無人機作戦
②長距離航空作戦
③ステルス航空作戦
④水中作戦
⑤複合化システムエンジニアリングと統合
では、具体的な兵器・技術はどのようなものでしょうか?
例えば、厳しい環境下でも相手の領土を深くに侵入できる「高高度長期滞在無人航空機」
(RQ配布ん-4:グローバルホーク後継のステルス機)、
「無人偵察攻撃」(MQ-9リーパー)、空母の甲板から発着する
高い機動性とステルス性を備えた「艦載無人攻撃システム」(NQ-XやNーUCAS)、
相手に察知されないように侵入し領土の奥深い目標を正確に攻撃できる
「ステルス長距離打撃爆撃機」の次世代機、陸上に対する攻撃能力を高めた潜水艦、
敵の弾道ミサイルに対する地域防衛やミサイルによる飽和攻撃に威力を発揮する
電磁レールガンや高出力レーザー兵器、外部からの攻撃に対する復元力が強い
小型衛星で構成する通信監視システムなどが、これに該当します。
いずれも、中国が追いつけないレベルのものを目指しています。
米軍は、核兵器を使わずに、相手国の内深部を攻撃できる能力を追求しています。
それが、「通常兵器による迅速なグローバル打撃」(CP GS)構想ですつまり、
「C PGS」は、「第3の相殺戦略」の延長線上にあるものといえます。
「CPGS」では、地球上のあらゆる場所へ、1時間以内に、通常戦力による精密で、
破壊力のある攻撃を行うことを目指しています。
核兵器の使用のハードルは極めて高く、また、その時々の財政負担も大きいことから、
CPGS 構造には「使いやすい長距離攻撃能力」として、
既存の戦略核戦力と通常戦力の間にあるギャップを埋めることが期待され、
アメリカは核兵器に代わる抑止力を模索しているのです。
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