CSBA(戦略・予算評価センター)が唱えたエアシーバトル構想の基本概念は
①拒否し防御する。
②長引かせ疲弊させる
③懲罰を課す
の3つから成り立っています。
中国や北朝鮮から飛んでくるミサイルに対し、MD (ミサイル防衛)で
完全に防御する事は期待できません。
そのため「同盟国的な防御陣地を作ってくれるか」、「ミサイル攻撃に
どこまで耐えてくれるか」、「中国本土への攻撃をどうするか」が大きな問題となります。
この中の前者2つは、アメリカ軍ではなく同盟国、つまり日本がすべき役割です。
アメリカの対中戦略では、日本が自立して戦うことが前提となっており、
日米ガイドライン(2015年4月改定)でも「日本は、日本の国民及び領域の防衛を
引き続き主体的に実施」すると明記されています。
②に関して作戦が長引く中で防御(国を守る)する」も、日本が果たすべき役割の1つです。
米国は中国の経済力を低下させるために、経済封鎖などを実施します。
そして③の「懲罰を課す」は、盲目化作戦や中国本土への攻撃等を指します。
これはアメリカの役割で、攻撃するかどうかは大統領の決断に委ねれられます。
エアシーバトル構想において同盟国・友好国がやらなければならないのは、
自国の領域防衛を全うするために第一線戦力を強化するとともに、
敵の攻撃を跳ね返す抗堪力や長期戦に耐えるうりよう継戦力を増強することです。
そして、米国と連接できるA2/ADネットワークの構築が重要になってきます。
一方、長距離作戦や経済封鎖などの周辺作戦はアメリカの役割ですが、
これらの活動をネットワークでつなぎ、関係国間で強固な共同防衛体制を
構築することが求められているのです。
CS BAとが提示する米国と同盟国の役割分担は(27)の通りですが、
トランプ大統領施政方針演説で述べた「NATO、中東、太平洋地域のいずれでも、
我々のパートナーに戦略及び軍事作戦で直接的で意味のある役割を果たし、
コストを公正に分担することを期待する」とした「役割」とはまさにこのことでしょう。
中国国防部は、エアシーバトル構想を「アメリカは、無人機やサイバー戦、電子戦、
ミサイルといった新兵器開発に注力し、冷戦的色彩を帯びた新たな軍事同盟体制を作ろう
としている。
こうした行為は、平和や協力が重んじられ昨今の時代の流れに逆行している」と
強く批判します。
中国はエアシーバトル構想を警戒し、このような牽制をしてきたのです。
前述のように、2013年5月には国防省内に「エアシーバトル室」と言う検討室が置かれ、
エアシーバトルは具体化されていきます。
阻害されたアクセスを取り戻す限定的な作戦構想として、中国本土への縦深攻撃も、
「死の連鎖」を断ち切ることを狙いとした限定的、抑制的なものに変わりました。
CS BAが提唱したエアシーバトル構想は、「中国と戦い、これを打倒する」と言う作戦目的でした。
ところが公式発表されてエアシーバトル構想は、
「国際公共財における行動の自由を維持するために対抗する」と言う目的に変化していました。
その結果、アクセスを維持するための限定的な作戦だったのです。
A2/AD能力を無力化する盲目化作戦も公式のエアシーバトル構想では抑制的です。
そして2015年1月、アメリカの国防省はエアシーバトル構想を
「JAM-GC(国際公共財におけるアクセスと機動のための統合構想)」に改めました。
所管は「エアシーバトル室」から統合参謀本部の第7室に移され、
引き続き作戦構造のブラッシュアップが行われています。
エアシーバトル構想は、中国のA2/AD戦略を無力化するために推進されているものですが、
A2/ADを可能にしているのは衛星通信やレーダー等のC4ISRシステムです。
そのため、エアシーバトル構想を引き継いだJAM-GCでも、敵のC4ISRの能力や
精密ミサイル攻撃を「ソフト的」に破壊・妨害するのが中心的な考えとなっています。
ソフト的と言うのは、電子戦・サイバー戦のことで、宇宙やサイバー、電磁空間といった
分野で優位に立つことが、この構想を実現させるための大前提となっていますがそして、
アメリカが得意とする5つの分野(無人機作戦、長距離航空作戦、ステルス航空作戦、
海中作戦・複合化作戦・エンジニアリングと統合)だけでなく、
優位性が高い領域の優勢を他の他の分野に活用し、
陸・海・空・海兵隊の戦力をより一体的に統合運用することが必要とされています。
さらに、同盟国との密接な協力によって、シナジー効果が拡大されています。
こうして各行政組織、統合参謀本部及び各軍種の上位組織だけでなく、戦闘コマンド、
パートナー国を含めたウォーゲームで革新的な民謡構想が生まれる可能性があります。
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