【日中もし戦わば】日本には安全な場所はない

われわれは尖閣諸島だけに関心が向きがちなので、中国の軍事的脅威も

「せいぜい沖縄から九州ぐらいまででしょう」と考える人が少なくありません。

 ところが中国軍の配備から見れば日本に安全な場所はありません。

 北海道や青森県の三沢も中国のミサイルの射程に入っているので、

侵略地域を勝手に尖閣諸島、八重山諸島、沖縄本島等に限定するのは誤りです。

 中国のミサイルと言えば弾道ミサイルを思い浮かべがちですが、巡航ミサイルも増強されています。

 日本では通常の弾道ミサイルへの対応は最低限度となっていますが、

巡航ミサイルは抵抗度を飛行するのでレーダーに探知されない可能性があります。

 巡航ミサイルの中でも特に厄介なのは、弾体の中に多数の子爆弾を搭載した

クラスター爆弾です。

 これを使用すると不発弾が残るので、2007年のオスロ会議で同爆弾の禁止が

提唱されました(オスロ宣言)。

 ところが中国はオスロ会議に参加しておらず、クラスター爆弾を保有していると

みられています(日本は2015年に廃棄完了を発表)。

 滑走路にクラスター爆弾が投下されると穴だらけになってしばらく使えなくなります。

 中国軍は東アジアにあるアメリカの主要施設を攻撃できる弾道ミサイルと

巡航ミサイルを既に開発しており、さらには第一列島線沿いの標的を攻撃する

ステルス戦闘機の開発にも取り組んでいます。

 そういう意味では、我々にとって極めて厳しい状況にあるといえます。

 さらに中国は現在「極超音速滑空ミサイル」を開発しています

(イメージは(29)に示すとおり)。

この次世代兵器の飛行速度はマッハ10、核弾頭搭載も可能とされ、

特異な動きをして防衛対処が困難だと言われています。

 もちろん、極超音速滑空ミサイルはアメリカやロシアも開発していますが、

中国も同等の技術を有していると思われます。

 中国の短期・高烈度決戦の局地戦では、第一列島線の国が攻撃対象となります。

 そのため、日本にも直接的な脅威があり、同じような脅威を受ける第一列島線上に

ある台湾やフィリピン、さらにベトナムなどとらつながらなければならないのです。

 一方で、中国は軍事力を使わない「三戦」の戦略で、日米の分断を図っています。

 その代表例と言えるのは尖閣諸島問題であり、沖縄の基地問題です。

さらにサイバー戦などを展開し、在日米軍基地等を直接攻撃しないで

日本を圧迫しているのです。

 そのうち、核で恫喝するようになるかもしれません。

 そしてアメリカ軍との間に心理的・物理的な溝が広がると、

中国は日米共同作戦の隙をつき、海上民兵に先導された多数の歩兵や特殊部隊等を使って

島嶼部を攻撃する可能性があります。

中国は、漁船約200隻を使えば1個師団(6000 ~10,000人規模)規模の

地上部隊を輸送することができるのです。

 これまで、実際に数百隻の大船団が日本近海に現れたこともあります。

 2014年には、約200隻の漁船が小笠原諸島の父島・母島周辺で、

不法な赤珊瑚漁を行っています。

 小笠原は第二列島線のライン上にある、中国側の日米に対する示威行動とみられています。

 尖閣諸島付近に多くの漁船が押し寄せたのも、一度や二度ではありません。

 こうした行動は、将来、上陸作戦を敢行するときのリハーサルとも考えられています。

 また2010年から施行された国防動員法によって、在外の中国人旅行者や留学生も

一斉に蜂起するでしょう。

 国防の義務を履行しないものや拒否するものは罰せられるので、

日本にいるたくさんの中国人も決起します。

 そして、彼らの手引きで特殊部隊が入り込み、日本国内に大打撃を与えます。

 日中間で有事が発生すれば、少なくとも自衛隊の半分は南西諸島に向かいます。

 そうなれば、国内の守りは手薄になるわけですから、

この問題はシビアにとらえないといけません。

2014年のロシアによるクリミア併合では、階級章をつけてない軍人や民兵が暗躍しました。

 アメリカは彼らを「リトル・グリーン・メン」と呼び、その行動を

「忍び込む侵攻」と位置づけて注目しています。

 これを中国に当てはめると、海上民兵を活用した攻撃が該当します。

 クリミアと同じような脅威が日本にも迫っていると言うわけです。

 南西諸島には数個師団相当の兵隊が上陸してきますから、あっという間に占領されてしまいます。

 ですから、日中間での地上戦はそんなに緩くありません。

 しかも南西諸島の周囲はほとんどがサンゴ礁に囲まれており、

現有の水陸両用車で乗り越えるのは困難です。

 そのため、敵は必ず海岸から上陸するわけではなく、港や飛行場を使って

侵入することも念頭に入れておく必要があります。

 こうした中国の攻撃に運用されるのが、初動対処や局地戦対処を前提とする「快速反応部隊」です。

 総兵力約28万人で、空挺軍や軽機械化師団、特殊作戦部隊、海軍陸戦隊で構成されています。

 日本はこうした脅威の存在をしっかりと認識し、備えを固めておかなければならないのです。

 中国快速反応部隊の概要は(30)示します。 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ページトップに戻る↑                           ページ一番下へ↓

【日中もし戦わば】日本には安全な場所はない


About kabumagariya