【日中もし戦わば】「全世界関与」が基本のアメリカの軍事戦略

ここからは話はアメリカの軍事戦略に戻します。

 これまでに述べてきた「NSS」や「Q DR」などで、

どのような内容が示されてきたのかを見てみます。

 まず、国家安全保障戦略の基本姿勢ですが、2010年の「NSS」に端的に示されています。

 ここでは、アメリカの安全保障が、

①アメリカ、アメリカ国内同盟国及びパートナー国の安全、

②力強く、革新的で、成長するアメリカ経済による繁栄、

③アメリカ国内と世界における普遍的な価値の尊重、

④平和、安全、機会を促進する規範に基づく国際秩序、この4つが基盤であるとしています。

この方針は、2015年のNSSでも踏襲されています。

この4つの基盤に基づき、2012年の「NDS」および2014年の「QDR」で、

3つの柱が示されました。

①本土の防衛、

②グローバルな安全保障の構築、

③戦略の投射と決定的な勝利の3つです。

②では、同盟国や友好国の安全を保障するため、

アメリカによる世界の関与を継続するとし、

③では、米軍が敵を決定的に打破する能力を維持することによって、

1つまたは複数の戦域において攻撃を抑止すると記しています。

すでに何度か述べましたが、アメリカは「海洋国家」のシーパワーです。

東西を大西洋と太平洋で隔てられた「大陸規模の島国」であり、

いずれかの大洋を経由しなければ「世界島」と言われるユーラシア大陸にアクセスできません。

そのため、第二次大戦以降今日まで、米本土に軍のの主戦力を置き、

ユーラシア大陸のロシアと中国を取り囲む同盟国に必要な部隊を前方展開し、

その間の海上交通路を安定的に維持し、有事における軍事輸送、

通商や資源の自由なアクセスを確保することを基本としてきました。

そして、万一、ユーラシア大陸からの脅威が顕在化した場合には、

まず前方展開部隊をもって対処します。

そして次に、米本土から主戦力を送り込むか、他方面から戦力を転用します。

こうして、米本土から出来る限り遠方で敵を撃破して安全を確保するのです。

つまり、アメリカの軍事戦略は、「全世界関与」が基本です。

軍は全世界展開なのです。

そのための軍事能力は、核戦争から大規模~小規模の通常戦争、

対テロ戦、宇宙・サイバー戦、そして大規模災害対応や人道支援に至るまで、

「紛争のフルスペクトラムへの対応」、すなわちあらゆる事態に

シームレスに対応できることが追求されてきました。

 こうしたアメリカの全世界関与を可能にするのが、同盟国、友好国です。

 日本、韓国、台湾、フィリピン、オーストラリア、タイなど約60カ国が、

アメリカの安全保障を支えています。 

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