しかし、このような「前方展開体制」は、政情不安定国での軍事革命、
中国やイランなどの軍事能力の強化と強化に伴う在外米軍基地の攻撃に対する脆弱性、
国内の厳しい財政事情などを考慮すると、維持が困難になってきました。
先に戦い方が21世紀型に変わったことを述べましたが、こうしたことを踏まえて、
米軍がトランスフォーメーション(再編)に入りました。
ユーラシア大陸周辺部における「前方展開型体制」から前方展開戦力を縮小して
広報配備に移行し、紛争地域へは、後方からの「戦力投射型態勢」によって
対処するようになりつつあります。
考えてみれば、全世界といっても、もともとまんべんなくできたわけではありません。
選択的な関与になっていました。
2001年の同時多発テロ以降でアメリカは10年以上にわたって
中東での対テロ戦に多くの力を注いでいます。
つまり、アメリカは中東を選択してきたのです。
しかし、中国の脅威の増大に伴い、選択を変えなければならなくなりました。
そのため、2012年の「NDS」および2014年の「QDR」において、
アジア太平洋地域を重視する「リバランス」戦略に方向転換したのです。
アメリカは、2020年までに海空軍戦力の60%をアジア太平洋地域に配備する予定です。
こんな事は、中国のアジアにおけるアメリカの覇権への挑戦がなければ、
起こらなかったことです。
当初、中国は平和的台頭をすると、アメリカは楽観視していたからです。
中国に対する大きな懸念が最初に表明されたのは、2006年の「QDR」です。
ここでは、「アメリカと軍事的に競い合う可能性が最も大きいのは中国」と
述べられていました。
しかし、2010年の「QDR」では、対中配慮から敵対的な記述を避けています。
オバマ前大統領が当初は中国に融和的だったことの反映でしょう。
それでも、「中国やイランは、アメリカの戦力投射能力に対抗するための
非対称な手段を追求」と言う記述がありました。
そして、2012年の「NDS」および2014年の「QDR」で、前記したように、
よりリバランス政策による対中軍事戦略が明確に出されたわけです。
このプロセスで、最も重要なのが、中国の「A2/AD」戦略に対抗するための
「エアシーバトル構想」(ASB)と「第三次相殺戦略」の新たな戦略・作戦構想として
登場したことです。
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