そのゆるぎない勇気と任務への不屈の献身に敬意を表し、ジェームスEファネル大佐に捧げる。
目の前にある問題は単純にして深い。
中国の平和的台頭は可能だろうか。私の答えは「ノー」だ。
-ジョンミアシャイマー「なぜ中国の平和台とはありえないのか」(2004年)
はじめに中華人民共和国の北端に位置するゴビ砂漠の荒涼とした風景の中に、
大きさも形もほぼ完璧にアメリカの空母をかたどった標的が設けられている。
現在、中国の誇る第二砲兵部隊が対艦弾道ミサイルの着弾を完璧なものにするために、
この標的を使用している。
このゲームチェンジングなつまり、これまでの形勢を大きく変える対艦弾道ミサイルの
目的はただ1つ、アメリカ太平洋艦隊をアジア海域から駆逐することである。
そこから1600キロ離れた四川省西昌衛星発射センターでは、
地上発射の地球高弾道ミサイル「動能2号」など1連の対衛星兵器のテストが進められている。
このやはりゲームチェンジングな兵器は、アメリカの人工衛星を文字通りから
叩き落とし、それによって宇宙における同国の戦略的優位性を打ち砕くためのものでる。
また、中国最南端の風光明媚な海南島には、まさに007ばりの、
巨大地下潜水艦基地が完成している。
この基地からなら「巨浪2号」といった、世界中のどんな都市でも破壊することができる
大陸間弾道ミサイルを搭載した晋級原子力潜水艦が、潜航したまま密かに出撃できる。
アメリカはロシアとの協定に基づいて核弾頭の保有数を大幅に削減しているが、
中国は「地下長城」の開発を続けている。
地下長城とは、全長5000キロに及ぶ、迷路のように入り組んだ地下道である。
そこに現在、その数を急速に増やし続けている弾道核ミサイルが保管されている。
核ミサイルが向けられている先はアメリカだけではない。
中国との間に領土問題を抱えているインド、日本、フィリピン、ベトナムといった
国々もその標的にされている。
中国の為政者たちは「中国は平和台頭を望んでいるだけだ」と繰り返し主張しているが、
それならなぜこのような攻撃能力を急速に開発しているんだろうか。
これは核時代の最も重要な問題であり、本書が「地政学的推理小説」たる所以でもある。
読者には、「米中戦争が起きるか」と言う問題を共に考え、答えを見つけてもらいたい。
そのため、各章冒頭に、一緒に考えてもらうための問題を用意した。
答えの選択肢には、専門家の協力を得て、幅広い意見や考え方が網羅されている。
これから各章で問題を解きながら、読者とともに戦争と平和の見通しをさぐっていくことにする。
もちろん、本書の主眼は、高まりつつある危険に記録注意を喚起し、
平和への可能な道筋を示すことである。
現時点では、歴史はひたすら衝突へと向かっているように見える。
もしかしたら、行き着く先は核の崖かもしれない。
その流れを変える一助になれば、との思いから本書は生まれた。
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