【米中もし戦わば】016-02米中の「宇宙戦争」が始まっている

成長過程にある中国の宇宙軍事力、および拡大するその影響について述べる前に、

まず、「戦略的高地」についてざっと考えてみよう。

その意識が常に「高所に布陣するように」と助言してるように、

「戦略的高地」は紀元前の昔から重要視されていた。

 プロイセンの優れた戦術家クラウゼヴィッツも、「高台は見晴らしに優れ」、「

(高台にすれば)命中する確率も高まる」と述べている。

 「戦略的高地」は、石器時代の単なる高い木の枝から、やがて進化して

第一次大戦時の偵察用気球になり、第二次大戦時には偵察機になり、

1960年代には高々度偵察機になり、現在ではついに、

地球を何重にも取り巻いている複雑な人工衛星ネットワークになった。

 現在アメリカは非常に効果的に宇宙を軍事利用しているが、

平和と言う目的のためには不都合なことに、これが冷戦たけなわの時代よりも

さらに不安定な事態を引き起こすことになるかもしれない。

 冷戦時代、アメリカもソ連も、お互いの衛星システムには手出ししないと言う

暗黙の取り決めを固く守っていた。 

衛星による偵察や監視が核抑止力に決定的な役割を果たしていることを、

両者とも明確に理解していたからである。

 実際、向こうから第一撃のミサイルを打ってくる心配は無いかと

両者はともに確信できるのは、相手が大陸間弾道ミサイルをどうしようとしているか

双方が常時監視しあいるからこそだった。

 だが、現在、中国はアメリカとのそうした暗黙の了解に全く興味を示していない。

それどころか、中国は宇宙を平和の聖域とか地球外共有地としてではなく、

単に「情報化戦争」の戦場として考えている。

冷戦終結後の戦争の進化を考えれば、中国が宇宙を平気化しようと考えるのも

不合理な態度ではない。

 ここに、非常に明確な問題点がある。

 中国はこれまで、潜在的敵国アメリカがアフガニスタンやセルビアといった国々で

行ってきた戦争を最前列の席でつぶさに観察してきた。

いずれの戦争でも、アメリカは宇宙と言う戦略的高地から、多くの場合「体制変革」と

言う目標に沿って、常に勝利を収めたわけではないにせよかなり効果的に戦ってきた。

 つまり、冷戦時代に宇宙が第一に平和と抑止の道具だったの対して、

今では宇宙は非常に効果的な最終兵器へと変貌を遂げているのだ。

そして、いざ実戦となった場合には、この戦略的高地を確保した側が

まず確実に表示する、と米中双方が明確に理解している。

こうして、戦略的高地をめぐって皮肉にも、世界の二大経済大国であり

重要な貿易相手国である二国間で競争が始まり、中国は、攻撃、防衛両面の

宇宙軍事力を開発すべく極めてアグレッシブな戦いに乗り出すことになった。

中国は、一方の手で、アメリカと同じような、効果的な軍事行動を可能にする

宇宙ネットワークを握ろうとしている。

 そしてもう一方の手で、宇宙におけるアメリカの優位を無力化あるいは

破壊するための「暗殺者の棍棒」を開発しようとしている。 

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