潜水艦について論じた第十二章で、海南島が観光地であると同時に
中国の最も重要な軍事施設の集中する場所であることを述べた。
そこには、ミサイルを搭載した極めて機能性の高いロシア製戦闘機が
大量に配備されているだけではなく、高性能の通信傍受施設もあり、
その地域で活動するアメリカ軍などの通信を傍受している。
おそらく最も印象的なのは、楡林海軍基地内の巨大な地下基地に弾道ミサイル搭載の
晋級潜水艦が巧みに隠されていると言う事実だろう。
今やこの潜水艦隊はサンフランシスコやセントルイスやボストンにまでも
核弾頭を打ち込む能力を有している。
アメリカ軍が海南島の動きを監視しようとするのは当然である。
2001年4月1日アメリカ海軍の偵察機EP-3が海南島付近の上空で
通常飛行を行なっていたところ中国軍のJ-8戦闘機2機の妨害を受けた。
実は、その中国軍機のパイロットの1人王偉少佐は、何度もアメリカ軍機に
至近距離まで接近するなどの、
トップガンばりの危険で挑発的な操縦のせいで、以前からアメリカ軍のパイロットに
マークされていた人物だった。
その日、自動操縦で直線飛行していたEP-3の進路妨害したトップガン王偉は、
その危険行為の報いを受けることとなった。
彼の戦闘機の垂直尾翼がEP-3の左補助翼にぶつかったのである。
J-8戦闘機は2つに切断され、王偉は脱出したもののそのまま行方不明になるなった。
衝突の衝撃でEP-3のほうも急降下し始めた。
搭乗員24名もろとも、EP-3は30秒間に2400メートル落下し、
それからもう1800メートル降下した後、パイロットのシェーン・オズボーン大尉は
翼を水平に戻し、機体を上昇させた。
この危機的状況で、オズボーン大尉は重大な決断を下した。
海南島の陵水飛行場に緊急着陸する道を選んだのである。
着陸後、搭乗員は直ちに身柄拘束された。
このような緊急着陸は国際法で認められた行為であるにもかかわらず、である。
この空中衝突は外交上の大騒動に発展したが、中国は一貫して、
「中国側には200カイリの排他的経済水域内で軍用機の飛行を阻止する権利がある」と
主張し続け、アメリカ側からいくつか屈辱な謝罪を引き出した。
搭乗員は10日後にようやく解放されたが、その間に中国はEP-3の
コンピュータ・ハードディスクから重大な機密データを抜き出す事に成功していた。
その後の国際的な事件を考えると、海南島事件でおそらく最も注意すべき点は
現在も中国軍機とそのトップガンパイロットが極めて危険な挑発行為によって、
アメリカ軍の偵察機日常的に嫌がらせをしていると言う事実である。
つい最近も、嫌がらせの典型のような事例があった。
ペンタゴンによれば、中国軍機がアメリカ海軍のポセイドン(P-8)哨戒機の上方で
バレルロールを行ったり、搭載兵器を見せながらP-8の鼻先を直角にかすめて飛んだり、
翼端から6メートル以内と言う至近距離を「通過」したりして威嚇してきたと言う。
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