正解がわかったところで、次の問題に移ろう。
この世の戦争論は中国に、ひいてはアジア全体に当てはまるだろうか。
もし当てはまるとすれば、中国の反政府運動や社会不安が戦争の被害になる場合も
あると言うことである。
それでは、少なくとも複数の中国通が憂慮している陽動戦争の可能性について
検討してみよう。
彼らの論拠の出発点は、「中国は、選挙を経て選ばれたわけではない、
つまり、正当性を持たない中国共産党によって支配されている国だ」と言う見解である。
事実、中国と言う人口14億人の国は、基本的に互選によって選ばれた
およそ2500人の共産党員によって支配されている。
さらに肝心なことを言えば、中国共産党が政権を掌握していられるのは
国民に幅広い支持や求心力のあるイデオロギーのおかげではなく、
世界最大の軍隊や警察力のおかげである。
求心力のあるイデオロギーと言うことを言えば、1970年代の経済革命前は、
共産主義と言うイデオロギーが国民を1つにまとめる接着剤の役目を果たしていた。
だが、経済革命によって共産主義を放棄して以来、イデオロギーよりもずっと単純で
しばしば残酷な、極めて中国的な性格を帯びた独裁主義が中国を支配するようになった。
求心力なるイデオロギーが存在しなくなると、国を1つにまとめる力として
ナショナリズムが利用されるようになる。
そして、そのナショナリズムを助長し掻き立てるには、
外部に適役をこしらえるのが1番の上策である。
まさに「ウワサの真相-ワグ・ザ・ドッグ」と同じ展開だ。
中国国民の敵になりそうなのは、中国の御用マスコミ流の言い回しを使えば、
過去を反省する再び軍国主義化する日本、南シナ海に浮かぶ中国固有の聖なる島々を
占拠しようとしている野蛮なフィリピン、中国の領海から石油と天然ガスを
盗み取っている裏切り者ベトナム、そしてもちろん、中国の領土を分割しようとしている
悪辣な米帝、などである。
こうした状況の潜在的な危険性は、中国自身の持つ独裁主義的性質によって
一層拡大している。
少なくともアーロン・フリードバーグやマーク・ストークスらの意見によれば、
中国共産党の目標は中国そのものの存続ではなく、もっと単純に共産党自体の存続である。
だとすれば、自分たちの権力が脅かされた場合には、その脅威を取り除くためなら
共産党指導部は国民を危険にさらすことも意に介さないだろう。
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