経済的・政治的・軍事的結びつきから中国とロシアはおのずと同盟関係を結ぶように
思われる一方、より長期的に見ると、ロシアが「バランスを取るために」
アメリカやその他の同盟諸国と手を組み、中国の台頭を抑えようとする可能性も
充分考えられる。
その最大の理由はおそらく、ジョン・ミアシャイマー教授が大国政治の理論の中で
重要なモチベーションの1つとしてあげているもの、つまり恐怖である。
中国に対するロシアの恐怖は、ロシアがほぼ10倍の人口を要する中国と
世界最長の国境線を共有していると言う事実に端を発している。
しかも、ソ連崩壊以前、中国のGDPはロシアのわずか3分の1ほどだったのに、
現在ではロシアの4倍以上へと驚異の成長を遂げている。
人口と経済のこのような厳しい現実に直面して、多くのロシア人が、
極東ロシアへの中国人の合法・非合法の移住が、ロシアの国土を
着実に侵食していくだろうと心配している。
同時に、ロシアの天然資源への中国のあくなき欲求によって、
ロシアついには中国の「植民地」にされてしまうのではないかと言う恐怖も抱いている。
今ではアフリカの大部分、ラテンアメリカのかなりの部分、
オーストラリアやカナダの1部が中国に支配されているが、
それと同じやり方で中国がロシアをも支配するようになるだろう。と。
ロシア国内には、ますます強大化する中国はいつか、帝政ロシアが中国から
領土を奪ったことを盾に、天然資源に富めるシベリアを武力によって
強奪しようとするのではないか、と懸念する声さえある。
ひょっとしたら、清が帝政ロシアにはウラジオストク港を割譲させられた
1858年の愛琿条約が不平等条約であったことを盾に、
中国からウラジオストク港を返せといってくるかもしれない、と。
このような現状から考えれば、両者にとってずっとマシな長期戦略は
アメリカ主導の「バランス連合」に加入することだろう。
そのほうが、ロシアの技術と天然資源を世界最大の産業基盤と兵力を人口に結びつける
中露同盟よりも、ずっと世界の安定と平和的バランスに貢献するだろう。
アメリカ主導のバランス連合のメリットはこのように明らかなのだが、
冒険主義的なロシアがクリミヤ併合を、その正反対の方向へ、つまり中国の腕の中へと
進んでいるように見える。
民主主義と自由、法による支配、国境線の現状維持、領土、領海をめぐるあらゆる紛争の
国際法による非暴力的解決を徹底し、それらに基づいて世界平和を実現するためには、
これはどう考えても喜ばしい見通しとは言えない。
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