【米中もし戦わば】032-02「エアシーバトル」戦略は得策か?

1つの戦略(選択肢1)は「怪しいバトル」戦略と呼ばれている。

 ペンタゴンの総合評価局が唱えるこの戦略は、アメリカの海軍艦船と前進基地への

通常兵器による攻撃に対して中国本土へ反撃することを視野に入れている。

こうした戦略に対して、ジョージ・ワシントン大学教授アミタイ・エツォオーニのような

エアシーバトル反対派は、「このような反撃は直ちに米中間の核戦争につながる」として

即座に拒否反応を示した。

2つ目の戦略(選択肢2)は、「オフショア・コントロール」戦略と言う

マイルドな印象の名前で呼ばれることもあれば、それよりはるかに刺激的な

「ウォーアットシー」戦略と言う名前で呼ばれることもある。

アメリカ国防総合大学のT・X・ハメス大佐や海軍大学院のジェフリー・クライン大佐と

ウェイン・ヒューズ大佐などによって提唱されたこの戦略は、

第一列島線以東を中国の商船と軍用戦の「立ち入り禁止区域」とするとともに

(アメリカ版の領域拒否)、さらに広範囲の海上封鎖によって中国の世界通商路を断つ

と言うものである。

この戦略(単純化するため、これからは「オフショア・コントロール」戦略と

呼ぶことにする)の中心的前提は、経済封鎖するぞと脅かすだけで中国は

攻撃を思いとどまるかもしれないし、中国は攻撃を仕掛けてきた場合でも

実際に経済封鎖を行えば、中国は最初の攻撃で領土を獲得しても

それは明け渡すしかなくなるだろう、と言うものである。

エアシーバトル戦略と同じように、オフショア・コントロール戦略にももちろん様々な

批判の声がある。

「封鎖はうまくいかない」と主張し、中国による現状変更の既成事実化を警告する反

対派は、オフショア・コントロールを実効性のない弱い戦略だと非難する。

 直接反撃される心配がないとなれば、中国はアメリカの軍事資産に

ミサイルをどんどん打ち込んでくるだろう、と。

3番目の「ハイブリッド」戦略(選択肢3)は、エアシーバトル戦略と

オフショア・コントロール戦略を組み合わせたものである。

これには、両戦略の最良の部分を組み合わせたものなのか、

それとも最悪の部分の組み合わせなのかと言う問題がある。

この機能は本書のテーマ「米中戦争は起きるか」の中核をなす問題だから、

それぞれの戦略の長所と短所をシステムシステマチックに精査する必要がある。

本章ではこれから、エアシーバトル戦略の論理的根拠と実行方法、

潜在的問題に焦点を当てて論ずることにする。

次章では、オフショアコントロール戦略について同様に論じるとともに、

この2つのどちらかが別のアプローチだとすればそれはどちらか、

さらに、両戦略の特徴を組み合わせたハイブリット戦略の方がより現実的ないし

望ましいかどうかについて結論を述べてみようと思う。 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ページトップに戻る↑                           ページ一番下へ↓

【米中もし戦わば】032-02「エアシーバトル」戦略は得策か?


About kabumagariya