もちろん、エアシーバトルの問題点は、軍用地図の上で合理的でシンプルで
論理的に見える戦略が、もう少し深く考えるとずっと複雑になってくることである。
何より重要な問題は、中国が核兵器によって反撃に出る可能性である。
エアシーバトル反対派によればその可能性は非常に高いと言う。
これは、エアシーバトル実行を命令するにあたって、アメリカ大統領が
クリアしなければならない最も高いハードルである。
もちろん、一度中国がアメリカ本土に核爆弾を投下したり、アジアのアメリカ軍基地や
空母に戦術核兵器を打ち込んだりすれば、アメリカも核兵器で
反撃せざるをえなくなるだろう。
中国では通常兵器と核兵器が統合的に管理されている事態が、ことをさらに複雑にしている。
通常兵器も核兵器も、第二砲兵部隊によって運用されている。
そして、第二砲兵部隊がミサイルの保管場所を通常核弾頭型か高核弾頭型で
区別している証拠はほとんどない。
これがなぜ問題なのだろうか。
それは中国の通常弾頭発射能力を破壊すると言う限定的な目的でアメリカが中国本土を
通常兵器で攻撃した場合でも、中国の核攻撃能力の1部あるいは全てを図らずも
破壊してしまう結果になるかもしれないからである。
だから、エアシーバトルの可能性に直面した場合、中国は当然核報復能力の喪失を恐れるう。
これがエスカレーションの難しいところである。
核による平和を保障するとされている「相互確証破壊」原則が成立するためには、
先制核攻撃を受けた場合に核兵器で報復する能力を核保有国が有していることが前提となる。
だから、中国がエアシーバトルによって核報復能力を失うことがわかれば、
あるいは失うのではと危惧するだけで、先制核攻撃の誘惑にかられるかもしれない。
したがって、少なくとも、エアシーバトル反対派によれば、エアシーバトルの計画だけで
もエスカレーションを招く危険性が高く、実際エアシーバトルを開始したりすれば
それこそ疑心暗鬼になった中国は核兵器で反撃してくるだろうと言うことになる。
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