新旧の歴史的事実に鑑みて言える事は、「経済的相互依存は両刃の剣だ」と
言うことである。
国安全保障上不可欠ではない物質は双方がバランスよく輸出入している、
といった特定の条件下では、経済的相互依存は平和維持に役立つだろう。
この場合は、貿易による利益が侵略のコストを上回っている。
だが、どちらか一方が国家安全保障上不可欠な物資の輸入に過度に依存しているような
場合には、経済的相互依存が返って紛争をエスカレートさせる方向に働く可能性がある。
したがって、経済的相互依存に頼ってアジアの平和を維持しようとする態度は、
歴史や現状の冷静な分析に基づく戦略と言うよりも希望的観測のように思われる。
プリンストン大学のアーロン・フリードバーグは言う。
「日中関係を見てみると良い。貿易でも投資でも、両国は極めて緊密な結びついている。
にもかかわらず、中国は日本との衝突のリスクを高める行動を取り続けている」
しかも、戦争を誘発する要因は利害と言う合理的なものだけではない。
アメリカ海軍大学校のトシ・ヨシハラは、これについて次のように述べている。
私としては、経済的相互依存によって合理的な利害分析が生まれると思いたい。
戦争になれば相互依存関係は当然破壊され、双方が莫大な経済的損失を被るのだから、
合理的な利害分析は相互に自己抑制効果をもたらすはずだ。
だが、歴史を振り返れば、戦争勃発には恐怖や名誉といった、損得勘定以外の要因も
絡んでいることがわかる。
国家が重要な国益を守るために武力を用いる必要があるかどうかを決定する際、
主な推進力となるのがこの2つである。
だから、このような漠然とした要因も考えに入れるなら、
米中間で戦争が起きる可能性を除外しない方が賢明だと思われる。
これに補足して、フリードマンが次のように述べている。
貿易は安定と平和の源だとこのこれまで長い間信じられてきたし、
大局的な意味ではこれは真実だと思う。
歴史を振り返ってみても、概してこれは正しい。
だが残念なことにこれは保証ではない、密接な通商関係にある国同士が戦略的・政治的に
も
良好な関係にあるとは限らない。
そして、歴史上、密接な通商関係にある国同士が戦った例もあるのだ。
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