【米中もし戦わば】038-05、人民解放軍を本当に掌握しているのは誰か?

本章の締めくくりに、核抑止力では通常戦争防ぎきれない理由をあと2つ述べておこう。

 まず、人民解放軍が本当に掌握しているのは誰か、と言う恐ろしい問題がある。

 これに関してはかなりの異論があり、意見の一致を見ていない。

 とは言え、軍の1部が暴発して通常戦争の引き金を引き、

そこから核戦争へとエスカレートすると言う最悪のシナリオも考えられる。

さらに次のような、やはり恐ろしいゲーム理論的な可能性もある。

 中国指導部は完璧に合理的に考えた結果、純粋にクラウゼヴィッツの「代数による戦争」

と言う観点から通常戦争と言う結論に達するかもしれない。

計算の結果、中国は、自国の軍事力がアメリカにアジアからの撤退を

余儀なくさせるほどの打撃を与えられ段階に達した、と合理的に結論づけるかもしれない。

だがもし、アメリカのほうも、そのような撤退は経済的、道徳的、国家安全保障的に

容認しがたい、と言うやはり合理的な判断を下した場合、最悪の計算間違いにより

第三次世界大戦の「試合開始」となる。

結局のところ、言える事は、米中間で現在ほぼ拮抗している核能力がアジアの通常戦争を

抑止すると言う確証は無い、と言う事だけである。

歴史上の事例も抑止理論から引き出される結論もあまりにもまちまちで、

恒久平和の明快なビジョンも保証も与えてはくれない。 

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