まず初めに理解しておくべきなのは、対話や交渉に対する中国の姿勢は
文明の衝突を表しているだけではないと言うことである。
それは、彼らが我々とは全く異なる戦略的計算に基づいて行動していることを示している。
これを理解するため、交渉をポーカーゲームに例えて、透明性に対するイメージの
対象的な姿勢について考えてみよう。
ポーカーゲームが行われているテーブルの一方の端には、超大国アメリカが座っている。
元国務次官補キャンベルは次のように言う。
アメリカは、自分が持ってるカード全て見せる。
我々がどれだけ強いかを見ろ。
なめた真似はしないほうがいい、と。
アメリカ側から見れば、このような透明性は自己中心主義や虚勢に基づくものではない。
これは、もし自分がカードを全て開示し、エース4枚が全て揃っていることを示せば
みんなが負けを認めるだろう。
と言う仮定に基づく合理的な戦略なのである。
完全ガラス張りのアメリカ軍はこのようにして平和を維持するのだ、
とペンタゴンやホワイトハウスは考える。
ポーカーゲームが行われているテーブルもう一方の端には、不透明性と言う正反対の
戦略を駆使する中国が座っている。
キャンベルはは言う。
中国は潜在的敵国に対して自国の能力を隠し、不透明性によって抑止力を実現しようと
することが多い。
もちろんアメリカの力ずくのゲームに対して、台湾問題などでずっとカードを伏せてきた
プレイヤー=中国の視点から見れば、これもやはり合理的な戦略である。
地下長城にどれだけ核弾頭を保管してるのか、どんな兵器を宇宙へ打ち上げているのか、
対艦弾道ミサイルを本当に航行中のアメリカ空母に命中させるのかどうかといった
問題に中国が答えなければ、競合国の不安は高まる。
紛争時には、このような不安が疑念や躊躇を生み出す元になる。
特にアメリカは結局のところ、中国の非対称兵器という「ストレート・フラッシュ」の方が
手持ちの4枚のエースよりも強いのではと心配せざるをえなくなる。
だから、中国としては手の内を見せるわけにはいかない。
これでは平和に向けての話し合いと言うよりもにらみ合いであり、手詰まり状態である。
ジョンズ・ホプキンス大学のデビット・ランプトン教授は、この状況について
次のように述べている。
アメリカは透明性が抑止力につながると信じ、中国は曖昧さと不透明性が
抑止力につながると考える。
もちろん、中国の不透明な態度は、中国が軍事力でアメリカと肩を並べるか上回ったと
感じた時点で変化するかもしれない。
それ以降は、中国も現在のアメリカと同じ理由で、つまり、あからさまに
相手を怖気付かせようとして自分の力を誇示しようとするようになるかもしれない。
しかし、必ずそうなると言う保証がない。
今のところ、透明なアメリカが不透明な中国を前にして身動きが取れない状態が
続いている。
これでは、交渉によって、軍縮や宇宙の非軍事化といった重要な分野で
有意義な条約を締結すると言う展望が見えてこない。
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