昨日は野暮用で
さらに重要な問題で米中が直接対話する場合にも、同様の文化と戦略の違いが見られる。
特に厄介なのが、東シナ海や南シナ海で両国の軍艦が遭遇した時
(こうした事例はますます増えている)、
軍艦同士の適切な直接的コミニケーションがないことである。
アメリカ側から見れば、このようなコミュニケーションは、
戦争の引き金となりかねない判断ミスを防ぐために極めて重要である。
しかし、中国側はこれと全く異なる戦略的観点に立っている。
カート・キャンベルは言う。
中国は、中国本土のすぐ近くに展開しているアメリカ軍に、
「危機が起きても、前もって試しておいたコミニケーション手順がある。
この切り札があるから大丈夫」と言う安心感を与えたくないのだ。
キャンベルやアメリカ平和研究所のステファニー・クライネ=アールブランドが言うように、
中国にとってはこのようなコミニケーションは「スピード違反者を守る
シートベルトのようなもの」なのである。
こうした立場から、中国軍司令官では「中国の反応に対して懸念を持っている方が
アメリカ軍は慎重になるから、そのほうがはるかに好都合だ」と答えている。
直接的コミニケーションの欠如から判断ミスが起き、エスカレーションを招いたとしても、
それはそれで仕方がない、と。
だが、中国がコミニケーション・チャンネルを増やそうとしないことで、
「事態の収拾がつかなくなり」「前代未聞の難問が出来する」恐れがある、
とキャンベルは言う。
交渉プロセス自体について言えば、中国が東シナ海と南シナ海で無数に抱える領土紛争の
主な問題は、中国が多国間協議を嫌って二国間協議こだわることと、
拘束力を持つ国際仲裁機関の利用を頑なに拒むことである。
中国がこのような態度をとる理由は明らかである。
それは、フィリピンやベトナムなどの比較的小さな国と個別に交渉する方が、
同時に交渉して一致団結されるよりも、力にものを言わせて
自分の主張を押し付けられるからである。
典型例は、中国では東南アジア諸国連合(アセアン)加盟10カ国の間で
繰り返されている、「行動規範」をめぐる駆け引きである。
アシアン加盟国とは、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、
ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの10カ国である。
10年以上前、中国とアシアン諸国はすべての東南アジア諸国が守るべき
行動規範を採択する第1歩として「南シナ海行動宣言」に署名した。
戦略・国際研究センターボニー・グレーダーのようなアジア問題の専門家が言うように、
こうした行動規範が実際に採択され、中国とアジア諸国によって遵守されれば、
南シナ海の領土問題をめぐる武力衝突は事実上なくなるはずである。
というのも、それがどんな行動規範にせよ、「どの国も、武力や威圧によって
一方的に現状変更を試みてはならないし、領土領海をめぐる紛争はすべて
国際法廷の調停に委ねられる」と言う
条件がその土台になるはずだからである。
行動規範が採択されれば、西沙諸島や南沙諸島、スカボロー礁で中国が
既に行ったような現状変更工事は未然に防げるだろう。
さらに言えば、このような行動規範があれば、あらゆる領土問題は平和的手段によって
解決されるだろう。
しかし問題は、行動宣言に署名して以来、中国が行動規範の最終的な取り決めを
ひたすら引き延ばそうとしていることである。
このような引き延ばし戦術を取るのはおそらく、巨大化する軍事力にものをいわせて
アシアン諸国に自分の思い通りの条件を押し付けられるようになるのは時間の問題だと
考えているからだろう。
したがって、拘束力のある条約に実際に署名する理由は1つもないのである。
反対に、決定的な軍事力を蓄える時まで引き延ばす理由なら山ほどある。
その時が来たら、アジアのその他の国々、そしておそらくアメリカも、
中国の出す条件で交渉するしかなくなるだろう。
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