それでは、本書冒頭の難問はどのように解けば良いのだろう。
力による平和に至る真の道筋をどのように見つけたら良いのだろう。
そのためにはまず、真の国力とは何かについての理解を深める必要がある。
真の国力は、単なる軍事力をはるかに超越したものである。
中国人自身が、このような真の国について熱心に研究している。
彼らはそれを、「総合国力」と呼ぶ。
総合国力と言う言葉の奥には、真の国力は軍事力や能力といった「ハードパワー」だけに
根ざしたものではないと言う洞察がある。
真の国力は、そういったハードパワーと同程度に、経済力、労働力の熟練度、
政治体制の安定度、天然資源基盤の奥深さと幅広さ、教育制度の質、
科学的発見の状態やそれに伴うイノベーションや技術革新の程度、
さらにはその国の外交的・政治的同盟の性質や強度といった幅広い「ソフトパワー」にも
左右される。
その昔、副首相だった頃の鄧小平がいみじくもこう述べている。
「ある国の国力をはかる際には、総合的に、あらゆる面から見る必要がある」
ペンタゴンの元アナリスト、マイケル・ピルズベリーによれば、
中国は総合国力を信じられないほど正確に計算していると言う。
その最も注目すべき点はおそらく、軍事力が国力全体の10%程度にしか
評価されていないことだ、として彼は次のように述べている。
総合国力を重視する中国の考え方は、「戦争でどの国が勝つか」について
ペンタゴンが考える方法とは最初から全く異なっている。
測定対象だけでなく、測定基準も異なっているのだ。
ペンタゴンにしろアメリカ政府や議会にしろ、中国に対する防衛力を考える際に
グローバルな視点が欠けている。
アメリカの軍事力だけを問題にしているのに対して、中国は総合的な国力について
考えている。
ピルズベリーが言わんとしているのは、明らかにこういうことである。
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