基地および人工衛星の脆弱性はどちらも対処可能で、その解決法も比較的安価だと思われる。
これに対して、空母戦闘群の脆弱性が近年とみに高まっている問題についてはそうは言えない。
この脆弱性の原因は、中国の非対称兵器及び従来型兵器の量が増えているだけでなく、
中国の兵器全般の技術的な質も急速に向上していることにもことにあると思われる。
第8章ですべて述べたように、航行中の空母に1600キロ彼方から対艦弾道ミサイルを
発射して命中させる能力を中国が獲得した事は、明らかにゲームの流れを変える出来事だった。
凄まじい力でアメリカの艦船を文字通り海から吹き飛ばす、最高速度マッハ10の
超音速滑空ミサイルも同様である。
数と量では圧倒する中国のやり方についてはすでに何度も述べたが、
中国が現在すでに記録的な数の最新式非対象兵器を製造している事実は、
新ためてもう一度述べておく価値が充分あると思う。
このまま製造量が増えていけば、中国はミサイルの大量一斉射撃によって
ついにアメリカの防衛システムを圧倒できるようになるかもしれない。
千発のうちたった1発の弾頭が命中するだけで、任務阻止には充分なのである。
中国が大量生産しているのは非対称兵器だけでは無いことも、
ここでもう一度述べておきたい。
「世界の工場」は、自前の空母戦闘群を出動させるのに必要となるあらゆる航空機や
艦船を大量に製造している。
さらに、中国は今では、盗み出した技術を使って、第5世代の戦闘機まで製造している。
その製造機数は、予算不足に悩まされているアメリカのF-35やF-22のそれよりもはるかに多い。
アメリカン・エンタープライズ研究所のマイケル・オースリーは、
アメリカ議会がF-22の製造中止を決定したことを嘆き、数の力を侮ってはならないと
警告する。
F-22には高高度を高速で飛行し、ステルス性が高いためレーダーに捕捉されにくい。
だがいつか、彼ら(中国)の防空技術は今よりも向上するだろう。
彼らのレーダーは、より高高度をより高速で飛行する対象をとらえるようになり、
感度も向上するだろう。
F-22をはっきりとらえることができなくても、今より早く発見できるようになるだろう。
これはあらゆることに影響を及ぼす。
だから、やはり数も大切なのだ。
F-22が2機しかなければ、それは大した影響にはなり得ない。
第二次大戦時のように敵の上空を大編隊で埋め尽くすことができれば、
確実に大きな脅威となる。
残念ながら、今のアメリカにはそんなことはできないし、これからもできないだろう。
空中戦でアメリカが圧倒されるかもしれないとなれば、当然のことながら、
「アメリカは太平洋の制空権を維持できるのか」と言うさらなる問題が生じる。
ヘリテージ財団のディーン・チェンは、「制空権があっても勝てるとは限らないが、
なければ確実に負ける」と警告している。
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