このような厳しい見通しを踏まえた上で、「問題に対処するためにアメリカは
何をすべきか」と言う問題に戻ろう。
アメリカ海軍大学校のトシ・ヨシハラは、非対称戦と領域拒否をそっくりそのまま
お返ししてやればいいと考えている。
つまり、孫子の助言「上兵は謀を伐つ」に従って、中国自身の戦略を
攻撃してやればいいのだ、と。
ヨシハラの言うような「やられたらやり返す」戦略を実行に移すとすれば、
まずはアメリカ軍の再編成が必要となるだろう。
ヨシハラのアイデアは、第一・第二列島線の主なチョークポイントに攻撃用潜水艦を
並べ、有事の際に中国の軍艦及び商船の太平洋へのアクセスを管理できるようにする、
と言うものである。
つまり、潜水艦を建築ブロックがわりに使って、難攻不落の水中「長城」を建造するのである。
「潜水艦を槍の穂先として使う」この戦略は、中国の侵略行為に対する
強力な抑止力になる、と言うヨシハラが言う。
そんなことをしても自国の経済と軍事力がダメージを受けるだけだと悟れば、
中国も侵略を控えるだろう、と。
アメリカ海軍大学校のジェームズ・ホームズ教授も、こうした戦略に賛成して
次のように述べている。
潜水艦戦は、アメリカ流の得意分野だ。
冷戦時代もそうだったし、現在でもそうだ。
中国はなぜかいままで対潜水艦あまり力を入れてこなかった。
したがって潜水艦戦でアメリカが有利な状態は、今後かなりの間続くと考えて差し支えない。
しかし、水中「長城」の建造を潜水艦だけに任せておいてはならない。
アメリカも同盟諸国も、機雷戦能力を向上させる必要がある。
そうすれば、中国や台湾や尖閣諸島や南シナ海の島々等を機雷によって
孤立させようとした場合、アメリカと同盟諸国はその報復として上海や
大連や福建省の港を簡単に封鎖することができる。
機雷や潜水艦の配備が進むにつれて、対潜水艦戦対機雷戦の向上が求められるようになる
(アメリカは、歴史的に対潜水艦戦は得意だが、対機雷戦のほうは現在ほとんど
無視している)ここでも、目標は抑止力の向上と現状維持である。
これが、アメリカにとっての「戦わずして勝つ」なのである。
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