アメリカの戦略上の脆弱性を是正するためのこうした様々な方策の他にも、
軍事力による平和への道を模索する上で実行すべき措置はまだまだいくつもいくつかある。
第一に、停滞してる宇宙計画をもう一度軌道に乗せることが極めて重要である。
でないと、アメリカは、それこそ戦わずして、戦略的高地を中国に譲ることになる。
そして、一度失ったら、取り戻すことは難しいだろう。
第二に、第5世代の戦闘機F-35や現在空軍が開発中の長距離攻撃爆撃機を
大幅に増産することも非常に重要である。
どちらも非常に金のかかる計画だがそれぞれが独自の方法で抑止力を高め、
力による平和の実現に大きく貢献する。
F-35について言えば、太平洋戦域における制空権を維持するためには
その優れた性能が不可欠である。
この航続距離の比較的短いジェット戦闘機は、アジア地域全体に分散して
周到に配備する必要がある。
この場合、ものを言うのは数である。
第5世代戦闘機を大量生産していることを考えればなおさらである。
長距離攻撃爆撃ついて、アメリカン・エンタープライズ研究所の
マイケル・オースリンなど推進派は、中国や潜在的敵国が配備を進めていると思う
統合防空システムや防空システムに対応するためにこれが不可欠だと主張している。
この爆撃機は、戦時に空母戦闘群や基地が中国に無力化ないし破壊されたときの
重要な保険と言うだけではない。
これは、無人の大陸間弾道ミサイルに変わる、はるかに安全な兵器でもある。
オースティンは言う。
現在、アメリカには中国領空にまで無事にたどり着けない爆撃を送り込むと言う選択肢しかない。
それでは、どうする?潜水艦やアメリカ中西部のサイロからミサイルを打ち上げるのか?
中国は、そのミサイルにどんな弾頭が搭載されているかわかるだろう。
だから、こんなことを言うと冷戦時代に戻ったように思われるかもうしれないが、
長距離攻撃爆撃機のような、中国領空やロシア領空まで深く侵入できれる爆撃機は、
実は事態を安定化させる要素なのだ。
爆撃機なら、送り込むこともできるし送り込んでから呼び戻すこともできる。
戦闘機はっきりと目に見える。
これに対して、ミサイルをいちど発射してしまえば取り返しがつかない。
新アメリカ安全保障センターのパトリック・クローニンは次のように述べている。
21世紀には、海軍力と組む力のバランスのとれた軍事力、十分な数の従来型資産が
必要だ。
例えば、空母が必要だ。航空機も必要だ。潜水艦もいる。
海岸線をパトロールする艦船も必要だ。
それと同時に、サイバー技術や宇宙技術システムに投資し続けることが必要だ。
それはそれはゲームチェンジャになる可能性があるからだ。
だから、最新技術と従来型の技術のバランスが大切なのだ。
これらの全ての兵器システムにかかる多額の費用を考える際には、
抑止力に関するオースリーの金言「これの兵器を製造する理由はこれを使用するためでは
ない」を思い出すべきかもしれない。
B-52が50年間現役だったのは驚くべきことだ。
祖父、父、息子、と三世代のパイロットがこの同じ機に乗ってきたのだ。
B-52は素晴らしい爆撃機だが、現代の自動ミサイル防衛システムの前でひとたまりもない。
その上、現役のB-2ステルス機は20機しかないし、しかも時代遅れにもなりつつある。
だから新しい爆撃機が必要だし、必要な場合に地上と上空の障害物を除去できるように
しておくためには、F-35を大幅に増やす必要がある。
軍事的な理由だけでなく、政治的な理由からもそうする必要がある。
実際にはアジアの(不安定化ではなく)安定化に貢献するだろう。
ジョージタウン大学のフィリップ・カーバー教授は、抑止力構築のためには
こうした具体的方策の外に次のような原則が不可欠だと述べている。
必要なのは、中国に対して(他の国に対しても同様だが)それ相応の対応を取ると言う原則だ。
そっちが戦力を削減するなら、こっちも削減しよう。
ミサイル配備を強化してこっちの基地や同盟諸国を脅かすような挑発的な
真似をするなら、こっちも相応の対応を取る。
そして肝心なのはこうした原則をちゃんと伝えることだ。
今まで、われわれは基本的に、中国にただ乗りを許してきてしまった。
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