【米中もし戦わば】044-02、一貫して縮小を続けてきた米艦の艦船保有数

アメリカの外交にとってこのように望ましい政治的展開になっているにもかかわらず、

効果的な同盟関係を構築するのに現在ほど最悪な状況もない。

 その元凶は、嘘の約束や関係の無視、限定的寛容、乱暴なあるいは空虚なレトリックである。

問題の根本には、アメリカ議会やペンタゴンやホワイトハウスが世界中の他の問題に

かまけて注意散漫になっていることがあるかもしれない。

最悪の状況を象徴しているのは、アメリカのいわゆる「アジア重視」戦略である。

 2011年、アジア地域の経済的及び安全保障上の重要性に遅ればせながら気づいた

バラク・オバマ大統領は、当時の国務長官ヒラリー・クリントンの熱心な勧めに従い、

「今後アメリカはアジア太平洋地域を国家安全保障政策の主要な焦点とする」と華々しく宣言した。

 その一環として、ペンタゴンは、太平洋に回す海軍艦隊の割合を

およそ60%にまで引き上げると発表した。

しかし、こうした発表は口先だけの嘘の約束だったと判明した。

 アメリカは、約束の実行に見事に失敗したのである。

 失敗の原因は簡単な計算をすればすぐにわかる。

 まず、アメリカ海軍の艦船保有数は、ピークであったレーガン政権時代

(1970年代)当時の500隻以上から現在の300隻以下にまで、一貫して縮小を続けてきた。

 継続的かつ大幅な防衛予算削減により、さらに100隻程度にまで縮小するものと思われる。

 この右肩下がりの艦船保有数について、アメリカ海軍大学校のトシ・ヨシハラ教授は言う。

 2020年までにアメリカがアジア地域に回す戦力は、

2011年にアジア重視政策が始まった時と全く変わらないだろう。

相対的な「配分」は確かに太平洋へシフトするけれども、絶対数が減少しているのだから。

 数学的用語を使って言えば、縮小した艦隊の60%がアメリカのアジア重視政策を

振り出しに戻すだろう。

と言うことになる。

艦隊の縮小がアジアでのアメリカのリスク計算に大きな影響与えることによって

壊滅的な結果を招くかもしれないとしてヨシハラは次のように言う。

 アメリカ艦隊を大幅に縮小しても良いとする意見の根本的な論拠は、

「現在の兵器システムは10年前や15年前と比較してもはるかに高性能だから、

量的削減を質の向上で埋め合わせることができる」と言うものだ。

 だが、私は「量も質のうち」と言う格言は真理だと思う。

 それに、沈没した船は救いようがない。

 だから、戦域で使用できる艦船が少なくなれば、一隻一隻はより貴重になり、

艦船を危険にさらす事には一層躊躇せざるをえなくなる。 

これではまさに中国の思惑通りだ。

 中国問題に介入するコストとリスクの負担感を増大させるのが中国の戦略的計算なのだから。

 こうなると、例えば台中間で戦争が勃発したような事態に対して、

アメリカのが躊躇した挙句に何もしないことを選ぶ可能性がさらに高まる。

 ヨシハラのこのぞっとするような決断に追い打ちをかけるように、

ヨシハラの共著者でやはりアメリカ海軍大学校教授のジェームス・ホームズは、

ペンタゴンが将来アジアに配備しようとしているのは小型の沿岸警備隊であって

「最高級の戦闘資産」ではない、と言う。

 外交シグナルとしても抑止シグナルとしても、これではアジア重視政策が

みすぼらしくなってしまう。 

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