アジア諸国との同盟関係が重要であることは事実なのだから、
真の問題は、同盟諸国との関係にどう対応するのがベストか、である。
アメリカン・エンタープライズ研究所のマイケル・オースリンの、
現在の最悪の状況に対する分析とその打開策は傾聴に値する。
問題は、アメリカが十分な兵員と航空機と艦船を太平洋に派遣しているか否か、では無い。
アメリカは過去50年にわたって30万人の兵を派遣してきたのだ。
真の問題は、「われわれは何のためにそこにいるのか」だ。
同盟国が懸念しているのは、「アメリカは30万人の軍隊を派遣してはいても、
アジア地域の秩序を維持すると言う政治的意思を持っていないのではないか」と言うことなのだ。
アメリカから見捨てられるのではないかと言う懸念をアジアの同盟諸国が
募らせている原因についてオースリンは、問題はアジアの重視政策の失敗や
防衛費削減だけではなく「アメリカ軍は何のためにそこにいるのか」と
言う核心部分にある、と言う。
同盟諸国は、非常時(つまり、戦争になった場合)にアメリカが助けに来ないと
思っているわけではない。
問題は、同盟諸国が、生活の大部分に関わりがあるのは戦争ではなく、
非戦時の諸々の事柄だと考えていることだ。
オースリン「非戦時」とは、「日常の外交活動と、全面戦争の間の幅広い状態」だと
述べている。
違法な漁業活動の問題や大気汚染問題、石油掘削問題や領土問題など、
同盟諸国が不安を感じているありとあらゆる問題がこの広大な範囲に入るとオースリンは言う。
だが、オースリンにとって問題は、アメリカが「明確な戦略を持っていないように
見える」ことである。
アメリカは、「大規模な軍隊を駐留させていればそれで充分だ」と考えているが、
アジアの同盟諸国は「そこにいるだけでは困る。
ちゃんと関わってもらいたい」と言っているのだ、とオースリンは述べている。
「ちゃんと関わる」とはどういうことか。
オースリンは、南シナ海で中国の侵略行為のターゲットにされているフィリピンの例を
挙げて説明している。
フィリピンの領土の防衛はアメリカの仕事ではない、と考えるオースリーだが、
それでも、情報の共有や軍隊の訓練、国土防衛に必要な兵器の提供などによって
フィリピンを援助することができると言う。
残念ながら、アメリカはそうしたことを何一つとしてやってこなかった、と。
アジアの諸問題にきめ細かく関与しなければアメリカの影響力は着実に弱まっていく。
政治的意思が妨げになって例えば尖閣問題で日本に助力できなかったり、
あるいはもっと広い意味で言えば、アメリカの言う「アジア重視」や
「アジア・リバランス」が単なる言葉のあやだということが
同盟諸国に明らかになっていけば、アメリカの信頼性が疑問視されると言う結果を招く。
そして、アメリカの信頼性が揺らげば、次のステップはアメリカの影響力の低下である。
そして、アメリカの影響力が低下すれば、同盟諸国は当然のことながら、
中国に追随
してアメリカに損害を与えるにせよ、中国の攻撃をかわすために自ら核武装するにせよ、
独自の道を歩み始めるだろう。
どっちにせよ、アメリカにとって壊滅的な結果をもたらす政策の大失敗だ、
とオースリンは言う。
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