【米中もし戦わば】解説、日本の安全をどう守るのか

防衛省防衛研究所地域研究部中国研究室主任研究官飯田将史

日本の自衛隊がソ連による着上陸を念頭に置いて、北海道を中心にして

展開していたのは、今は昔の話である。

現在、陸・海・空の各自衛隊は、東アジアの海洋でプレゼンスを強化している

中国軍をにらみつつ、南西地域に重点を置いた展開を推進している。

 本書は、近年の中国の海洋進出に伴って、変化する太平洋地域の戦略バランスを

分析しながら、「米中戦争はあるか」「あるとすれば、どのように防ぐことが

できるのか」を、一般読者に向けてわかりやすく論じた優れた地政学の本である。

 本書ではもちろん尖閣諸島めぐる日中のつばぜり合いや日本に展開する米軍の基地

(佐世保、横須賀、横田、嘉手納等)の脆弱性などが、別個の立場から書かれているが、

日本の自衛隊がどのような戦略のもとに、中国の海洋膨張政策に対峙しているかには

あまり紙幅が割かれていない。

本稿では、「解説」の形をとりながら、日本から見た防衛戦略について記したいと思う。

尖閣諸島周辺の日本の領海に、中国の政府公船が始めて姿を現したのは、

2008年12月のことである。

ほぼ同じ頃に、中国が島嶼の領有権や海洋権益をめぐってフィリピンやベトナムなどと

争っている南シナ海でも中国公船の活動が活発化していることから、

この時期から中国の海洋膨張政策が、様々な衝突を見ながら、国際社会に立ち現れたと

言うことが言えるだろう。

 尖閣諸島周辺に莫大な石油が埋蔵されている可能性を指摘する調査結果が、

1968年に発表された。

急速な成長の結果として、中国経済は中東とアフリカから輸入される石油への

依存を進めており、その輸送には、米国の制海権下にあるマラッカ海峡を

通らなければならない。

この「マラッカ・ジレンマ」を緩和することも、中国が尖閣尖閣と東シナ海にまたがる

海底に依存している存在している石油の確保を目指す、理由の1つになっている。

その尖閣の領有を実現するために、本書にもあるようにまずは地図を書き換え、

漁船を送り込み、サラミをスライスするように徐々に支配を拡大していくというのが

中国の戦略である。

中国は、1996年の台湾における総統選挙に際して、中国が独立派とみなしている

李登輝に投票しないようメッセージを送るために、台湾の近海に弾道ミサイルを

撃ち込む演習を行った。

これに対して、米国は空母インデペンデンスと空母ニミッツを中心とする2つの艦隊を

派遣し、中国は矛を収めざるを得なかった。

 この時の蹉跌が、中国に、アメリカの空母打撃群に対抗する対艦弾道ミサイルなどの

「非対称兵器」の開発を促したと言う本書の見方は的を射たものである。 

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