第二次世界大戦では、アジアの覇権国になろうとした日本を、
アメリカは石油の禁輸などの手段を使って抑止しようとしたが、結局は失敗し、
戦争になった。
その後のアジアで、強力な海軍力を持った国は、中国は2000年代に
南シナ海や東シナ海に進出するようになるまでは、出現しなかった。
その意味で、現在アジア地域は、戦後初めてアメリカ以外の国が覇権国たるべく
拡張してきた、その試練を受けている。
本書が記す、フィリピンが領有権を主張しているスカーボロ礁を失った経緯に
愕然とした方もいるのではないか。
2012年4月に「中国漁船団」の侵入によって始まったこの奪取劇。
中国は、フィリピン製品の輸入制限や、フィリピンへの事実上の渡航制限によって
中国経済に依存していたフィリピンを追い込む。
アメリカの仲介で、2012年6月に両国は当該地域から撤退することが決まったにもかかわらず、
中国はそのまま居座り続け、礁のコントロールを握ることになった。
本書「米中もし戦わば」は、米国、中国のみならず、ベトナム、フィリピン、台湾、
韓国、北朝鮮、そして日本といった国々のパワーバランスの中、
中国は何を狙い、何が同盟国の側に足りないのかを、わかりやすく書いている。
沖縄の基地問題や集団的自衛権の問題も、こうした大きなコンテクストの中で
考えていくと、その糸口が見つかるかもしれない。
アジア地域のアメリカのプレゼンスを軽視する候補が大統領になって今こそ、
日本人に読まれる書と言うべきだろう。
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