【銀行デジタル革命】08第1章悩める巨人—挑戦がもたらす矛盾□ 1競争促進へと転換した法整備5%ルールの緩和

フィンテックの利用で日本が諸外国の後塵を拝している原因の1つは、

金融業態を縦割りで厳しく規制してきた日本の金融法制にあります。

序章で指摘した通りです。

しかし、フィンテックの普及を妨げてきたこの金融法制は、

異例とも思える速さで見直されつつあります。

金融庁は、フィンテックを利用したサービスの普及を通じて人々の利便性を

高めるための規制緩和へと方針を変えたのです。 

2016年と2017年には、銀行にフィンテック対応を促すことを目的として、

2年連続で銀行法が改正されています。

2016年の銀行法改正では、いわゆる「5%ルール」が緩和されました。

フィンテック企業に出資したり子会社にしたりして、

新しい金融サービスをグループ内に取り込むことを望む、銀行自身の要請に答えたものです。 

改正前の銀行法は、銀行との子会社が合算して国内の一般企業の株式を

議決権の5%を超えて保有することを禁じていました。

銀行の本業以外の事業を事実上禁じた、厳しい業務範囲規制です。

もしもある銀行が本業以外の事業で失敗して経営危機に陥ると、信用不安が広がり、

金融システム全体が不安定化してしまいます。 

そうしたことを懸念しての規制でした。

またこの規制には、銀行が産業支配したり、銀行が子会社を通じて特定の取引先向けの

貸し出しを優遇するような不正を排除する目的もありました。

改正によって、銀行は子会社保有分も含め5%、銀行持ち株会社は

子会社保有分も含め15%を超えてフィンテック企業の株式を保有することができるようになりました。

基準議決権数を超える議決権の取得等には、原則として内閣総理大臣の

事前の認可が必要とされていますが、実際にはフィンテック企業の範疇を広く捉えて

柔軟に運用されるだろうと予測されています。

ちなみに、改正法はフィンテック企業を「情報通信技術その他の技術を活用した

当該銀行の営む銀行業の高度化もしくは当該銀行の利用上の利便の向上に資する

業務又はこれに資すると見込まれる業務を営む会社」と定義しています。

金融庁は2016年の銀行法改正のポイント

①金融グループにおける経営管理の充実、

②共通、重複業務の集約等を通じた金融仲介機能の強化、

③ ITの進展に伴う技術革新への対応、

④仮想通貨への対応—の4点としています。

そのうち最も大きな意味を持つのが、①の「金融グループにおける経営管理の充実」に

含まれる5%ルールの緩和です。

5%ルールの緩和により、銀行はグループ内に電子商取引やスマートフォン決済を

手がけるIT企業を持ったり、オンラインショッピングサイトを運営する会社を

抱え込んだりすることができるようになりました。

それまで規制されていた事業分野に進出していくことができるようになったわけです。

楽天を始めとして、IT企業が銀行業に参入した例は既にありますが、

今後、あらたなサービスをめぐり、銀行などの伝統的金融機関と

フィンテック企業の競争が促進されることになると思われます。

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