2017年の金融行政方針では、「フィンテックによる金融イノベーションの促進を通じて、
利用者利便の向上や企業の成長力強化を実現し、わが国経済、金融の発展に
つなげていくことが重要である」と、意欲的に改革の方向性が示されています。
さらに、イノベーションの促進には金融機関とインテック企業との共同、連携が
重要だと指摘した上で、次のような3つの具体策を示しました。
①金融サービスのオープンイノベーションを推進するため、
平成29年改正銀行法等を円滑に施行するルートとともに、
オープンAPIの推進促進に向けた環境整備を図る
②フィンテック企業等によるイノベーションに向けたチャレンジを後押しするため、
フィンテックサポートデスクやインテック実証実験ハブを通じた、
新しい金融事業サービスの開始に対する支援を強化する。
③非対面取引に係る本人確認方法の見直しや、銀行代理業制度や店舗制度の課題の検討、
フィンテック時代に対応した制度の点検、見直しを行う。
金融庁の方針は、金融庁がフィンテックの企業経済社会の発展につなげることに向けて、
相当に強い意志を持ってさらなる法整備に取り込む考えであることを
示したものだと思われます。
金融庁は1990年代後半に起こった金融危機の真っ只中の1998年に
金融監督庁としてスタートしたのですが、当初は銀行の不良債権処理を
促すことなどを通じて、金融システムの安定回復に全力をあげました。
しかし、その後は、銀行による地域経済の活性化や、銀行や金融センターの
国際競争力の向上、利用者の利便性向上などの面で指導的役割を果たすようになりました。
金融システムの安定の観点から、当初、金融庁は金融機関とフィンテック事業者との
垣根を取り払う払う事に慎重でした。
表向きは銀行が子会社化したフィンテック企業が経営不振に陥ると、
その影響が銀行に波及し金融システムの安定を脅かすことを懸念しての事だと説明されていました。
それに偽りはないと考えられますが、閉鎖的な“島“意識が強く、
IT企業の金融業進出を嫌う銀行側のロビー活動の影響もあったのではないかと思われます。
しかし、実際に、IT企業が決済代行サービスを開始するなど金融業務の
アンバンドリング(切り離し)が進行する中で、金融庁が適切な規制を行うためには
業態別の金融法制を業務別へと改正する必要が生じたこともあり、
国際競争力の向上、銀行の構造改革の必要性、利用者の利便性向上等の観点を
打ち出して政策方針を転換し、フィンテックの旗振り役を果たすようになってきたのだと思います。
前述のように、フィンテック企業と銀行との関係は、
アメリカでは「破壊→競争→協調」と言う変遷を辿りました。
それに対して金融庁は、「協調→競争」と言う変化を想定した政策を目指しているように見えます。
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