海外と比較して、日本の金融機関のフィンテック対応がどの程度の水準にあるかは、
IT投資の分野や規模から類推することができます。
海外の主要銀行と比較したメガバンクのIT投資の特徴は、
これまで「規模が小さい」「外部委託比率が高い」「規制対応、維持、報酬等、
固定費の支出割合が高い」ことなどを指摘されてきました。
そうした状況に現在も大きな変化がない事は、日本銀行による市場「銀行の情報システム
の将来像—フィンテックが示唆する未来」が示しています。
それによれば、米国の銀行の2014年のIT投資は、メンテナンスなどを中心とする
「守り投資」の比率が42%であるのに対して、
顧客向けサービスの高度化、利便性向上のための「攻めの投資」の比率は58%を占めています。
他方、邦銀の2014年のシステム関連経費の目的別内訳は、
維持、運用が70%、安全対策が9%で「攻めの投資」である新規開発は
わずか21%にとどまっています。
近年、銀行の収益環境と先行きの見通しが一段と厳しくなっていることや、
既存の投資の更新費用がかさむことから、新規のIT投資の抑制傾向は一段と強まっています。
業務を効率化し顧客利便性を高めるような、フィンテック関連を含む
「攻めの投資」に割く費用はさらに削減されているはずです。
後に詳述しますが、日本の銀行はリストのためのIT投資には積極的ですが、
あらたなイノベーションを取り込むためのフィンテック関連投資については、
全体として海外使用銀行に遅れをとっています。
例えば、米国のゴールドマン、サックスは、AIやビックデータに強みを持つ
フィンテック企業に積極的に出資し、出資先企業と共同で株式市場分析支援ツールを
開発しています。
HSBC (香港上海銀行)はフィンテック企業に出資し、AIを活用した
顧客管理システムを利用しています。
顧客を評価した独自のスコアリングモデルに基づき、銀行内の顧客データと
外部データ(SNSやニュース等)などの情報を総合的に分析して、
担当者に顧客との対応を助言するといいます。
RBS (ロイヤルバンクオブスコットランド)はデジタル化で対面型顧客サービスを
縮小し、2010年に2200店舗だった国内支店を半減させました。
デジタル化の理由は、顧客のデジタルサービス志向への対応だったと説明しています。
こうした海外の銀行の先進的な取り組みに水をあけられているのが、
日本の銀行のフィンテック対応の実情です。
そのため、経営効率の内外格差は一段と拡大していく可能性があります。
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