アリペイは日本人向けの決済サービスを2018年春に開始することを目指していましたが、
ビックデータのアリペイあるいは中国への流出を懸念する邦銀の協力を得られず、
3年で1000万人の利用者獲得を目指した日本進出計画は暗礁に乗り上げました。
アリペイは日本の銀行を指定銀行とする計画でしたが、
提携を持ちかけられた複数の銀行は、今のところいずれも応じていません。
アリペイはアメリカの進出も目指し、米国の決済サービス会社
money gram internationalの買収に動きましたが、米国当局は買収を認めませんでした。
消費者の購入履歴など、情報として価値の高いビックデータの管理のあり方は、
日本の官民の頭を悩ませている問題です。
モノの販売から得られる情報には顧客や商品ごとの売り上げの金額だけではなく、
来店客数、回数、時刻に加え、広告や値引きといった販促活動への反応など、
膨大なデータが含まれます。
それらを分析すれば顧客行動を可視化し予測することができるようになるため、
商品やサービスの開発や顧客対応など、様々な場面で利用できます。
ある客がよく購入する商品がわかれば関連商品を進めることができるし、
就職や結婚などのライフイベントを把握できれば生命保険やマンションなどを
紹介することもできます。
ビックデータは宝の山なのです。
第一章で指摘した、銀行が「土管化」を懸念するも同じ理由からです。
日本のメガバンクがデジタル通貨の発行を急ぐ背景には、
アリペイなどの外資の決済サービスの上陸を想定した、
ビックデータの国内確保の狙いもあると思います。
アリペイのような外資のブラットフォーマーに上陸されては、銀行の「土管化」ではすみません。
ビックデータの活用は日本経済の競争力を左右する国家レベルの課題だと考えられているからです。
デジタル通貨構想を持つ銀行が何も動きがないわけではありません。
2017年9月17日の「日経新聞電子版」はJコインの管理会社は利用者の買い物や
送金の履歴を蓄積し匿名データに加工した上で、他の銀行や企業と共有して、
商品開発や価格戦略に生かす考えであることを報じました。
アリペイの日本上陸が遠くないと推測される状況下、外国企業が決済に関わる
ビックデータを蓄積することを警戒してのことだと、当該記事は指摘しています。
ビックデータの海外流出を強く警戒する日本政府がこの構想に関与している可能性も
否定できないでしょう。
一方、中国共産党中央委員会の機関紙「人民日報」を発行する人民網日本語版は、
2017年10月26日付で、Jコインの創設の目的はアリペイの対抗にあると報じました。
「経済」日本のJコインはアリペイの対抗策?モバイル決済のデータ争い激化」の
見出しを冠した記事は、前記の日経電子版が報じた内容を報告し、
それが日本政府の経済政策決定に重要な役割を果たすと指摘しました。
日本の銀行がアリペイの日本進出計画に協力しないのは、
背後にそれを強く警戒する政府の意向もあるからだと、著者が推測しています。
今後、利用者のさらなる拡大が予想される第三者決済サービスをめぐる攻防は、
企業間や国家間のビックデータ加工をめぐる攻防でもあるのす。
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