2017年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017」に「フィンテックの推進」が明記され、
その中で、10年後の2027年6月までに「キャッシュレス決済比率を倍増し、
4割程度とすること」が目標にかけられました。
しかし、10年と言う期間で達成するのは、なかなか難しいのではないかと予想します。
日本人には根強い現金志向があります。
第二章で見た通り、ビットコインなどの仮想通貨の取引量は急速に拡大していますが、
円などの法定通貨との交換レートの変動率が大きいことや、
決済終了までに時間がかかることなどが制約となって、
決済手段としてはあまり利用されていません。
実証段階にあるメガバンクの独自デジタル通貨にも課題が山積し、
本格的な普及には時間を要すると予想されます。
こうした状況を見ても、日本で近い将来、デジタル通貨や仮想通貨が
現金にとって変わる可能性は非常に小さいと思われます。
2000年代の前半に登場した電子マネーが現金を代替する可能性について
活発に議論された時期もありましたが、
電子マネーが現金の需要を顕著に減少させたと言う証拠は見つかりませんでした。
それどころか、日本では現金流通額が過去20年近く、予想以上のペースで増加を続けています。
主要国の中で現金が最もよく使われているのは日本です。
そのため、北欧諸国のように現金通貨が減少することを心配する議論は、
日本では全く聞かれません。
日本で現金志向が強い理由はいくつか考えられます。
①個人情報に敏感で、取引履歴を他者に知られることを嫌う人が多く、
匿名性が完全に担保され、利用者の情報が全く残らない現金決済を好む傾向がある、
②低金利が長期化し銀行預金の魅力が低下した、
③ 1990年代の銀行不安を受け、資産を銀行預金から現金へシフトさせる人が増え、
その後の現金を手元に置く傾向が続いた、
④治安が良く現金を所持することの不安が小さい、
⑤日本銀行が現金流通に万全を期しているため、現金が不足すること事態が生じにくい、
⑥日本銀行の取り組みにより紙幣のクリーン度が高い、
⑦ATMの数が多く故障が少ない⑧税回避の目的で現金が保有される場合がある—などです。
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