多くの国では現金の利用は依然として増加しています。
見逃してならないのが、各国の現金流通額を押し上げているのは税金逃れや闇取引、
賄賂などの犯罪に利用されやすい高額紙幣であると言う事実です。
現金流通額の中身を検討すると、日本には、現金のうち最高額面券の10,000円札が
全体に占める比率が圧倒的に高いと言う特徴があります。
名目GDP比率は17.5%で、現金流通額の92%に足しており、
どちらも主要国の中で最高水準にあります(図表4-3)。
一般に、人々が日常生活でより多く利用するのは高額紙幣の10,000円札ではなく
1000円札であろうと思われます。
にもかかわらず10,000円札の比率が高いと言うのは、10,000円札が決済手段と言うよりも、
金融資産として保有する価値貯蔵手段として受容されているからではないかと
推察できます。
少し古い数字ですが、2007年現在で10,000円札の発行残高の38%程度が
貯蓄需要で保有されていたと言う日本銀行に試算もあります。
日本で価値貯蔵手段としての現金需要が極めて大きい背景として、日本銀行は
①治安が相対的に好く、盗難などにより現金を失うリスクが他国へ対しては低い
②偽造された銀行券が相対的に少なく、銀行券に対する国民の信任が高い、
③低金利環境のため現金保有の機会費用が小さい、つまり銀行預金で持っていても
金利が低いため、現金で持つことのデメリットが小さいこと—の3点あげています。
これに加え、すでに指摘したように、税金目的とした需要も少なくないと著者は見ています。
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