ボストンコンサルティングの日本の現金コースの試算法と、
タフツ大学の米国のそれの試算を比較すると、後者の方がATMから現金を引き出すのに
必要な時間など目に見えないコストや脱税による政府の税収減なども考慮に入れ、
幅広く試算しています。
タフツ大学のコスト試算の手法で日本の現金コストを計算すると、
ボストンコンサルティングが試算した2兆円を大きく上回る金額となります。
タフツ大学が試算した現金コストは2013年の名目GDP比1.2%でした。
これを単純に日本に置き換えると、同じ当時の日本の名目GDPは約500兆円ですから、
約6兆円となります。
さらに、名目GDPに占める現金発行額の比率が、米国の2.52倍であることを踏まえ、
現金コストも同じように2.52倍だとして計算すると、
日本の現金コストは年間15兆円にのぼることになります。
もちろん治安状態が違いますから、盗難被害や地下経済の規模は日本の方が
はるかに小さいことを考慮すると、年間15兆円の資産が課題でしょう。
ですが、例えば、日本の盗難被害や地下経済の跋扈による損失を大雑把に
米国の1割と見積もって計算し直してみても、
年間5兆円上が現金を利用するコストとして失われていることになります。
現金の流通にかかるコストは、さらに広い概念で捉えることもできます。
第8条に詳述しますが、多くの国で高額紙幣が犯罪に使われています。
現金の利用とキャッシュレス経済の普及の遅れが犯罪を誘発し
治安を悪化させているとすれば、それは社会にとって大きなコストです。
衛生の問題もあります。
紙幣や硬貨を介して感染症が広まる可能性や、テロリストがそれを利用する
危険性もないとは言えません。
それらも広い意味では現金を利用するコストです。
二次的なコストや機会損失を含めて現金の流通にかかるコストを
広い概念で捉えるとそれは年間5兆円よりさらに大きな額となると
考えることもできるのです。
一方、キャッシュレス決済が普及すれば、現金利用の直接的なコストだけではなく、
広い概念でとらえた社会全体のコストを低く抑え、経済効率を.高めることができます。
その潜在力は、相当大きさとなるはずです。
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