製造業が消費者ニーズや輸出採算、技術革新などに応じて柔軟にビジネスモデルを
変えていくのに対して、銀行の動きは極めて緩慢だと言わざるを得ません。
理由の1つには、「護送船団方式」と言われた、かつての金融行政もあるでしょう。
金融当局は、船団の中で最も遅い船にスピード合わせて進むかのように、
最も収益体質が弱い銀行も生き残っていけるようなやり方で銀行業界を統制し、
過度な競争が生じないようにしてきました。
それは弱い銀行が破綻して社会不安を引き起こすような事態を避けたいと言う
考えからの事でした。
そうした経営環境の下では、規制を破ってでも新たなサービスを始めるとか、
利便性を高めて顧客を増やすといった発想はなかなか生まれません。
他の産業とは異なる規制が「銀行は特別な存在である」と言う意識と
プライドが生んでしまい、新しいことに挑戦しずらくなったと言う面もあったでしょう。
ビジネスモデルの転換を阻んだ要因としてはほかにも過去の巨額な投資や
大量の大量の従業員など負の遺産とも呼べるインフラを抱えていたことや、
バブル崩壊の経験からリスクテイクに過度に慎重になってしまったことも
あったと思われます。
フィンテック企業の台頭は、銀行に利用者の利便性向上の重要性を改めて認識させました。
しかし、その後の銀行業界を見ると、従来型の銀行ほど変わりなかったと言えそうです。
フィンテック企業の動きも睨んで新サービスにまず積極的に乗り出したのは、
失うものが少ない新興の銀行や、経営破綻した銀行を母体とした旧経営破綻銀行が中心でした。
例えば、ソニー銀行などのネット系銀行は、多数の有人店舗を抱える
伝統的な銀行と比べ、低コストで運営できる強みを生かして預金金利を高めに設定しています。
ATMやネットバンキング等が普及し、非対面の営業チャネルが伸びる中で、
旧経営破綻銀行であるりそな銀行は、あえて対面営業に活路を求めました。
りそな銀行では全店の窓口営業を平日午後5時まで延長したり、
年末年始とゴールデンウィークを除き、毎日午後7時まで営業する
「7ディスプラザ」を5箇所に設置したりして成功しています。
また、2015年4月からは、りそな銀行、埼玉りそな銀行、近畿大阪銀行の三行間で、
土日祝日を含む24時間いつでも振り込みができるサービスを開始しています。
三菱UFJ銀行と三井住友銀行も最近、自行本店宛の振り込みサービス時間を
いつでも当日決済する形へと拡大し、他行宛でも検討中とされています。
とは言え、りそな銀行等の動きを横目にようやく実施したと言う感が否めません。
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