北欧では諸外国と比べ、キャッシュレスの動きが顕著です。
現金の流通に大きなコストがかかっていることや、
現金にには犯罪に利用されやすいなどの欠陥がある事は第4章で指摘しましたが、
北欧の人々の間では、キャッシュレス化にはその他にも大きなメリットがあると理解されています。
経済社会における様々なコスト削減や能率性向上、犯罪対策、脱税対策もそうです。
またIT利用を志向する社会的傾向があること、政府、中央銀行が現金流通コストの削減のために
キャッシュレス化を推進する政策を実施してきたことから、それが顕著に進んだのです。
福祉大国のスウェーデンでは付加価値税(VAT)率が25%と他国と比べて
かなり高いことがよく知られていますが、
政府は長期間にわたり付加価値税の課税回避に頭を悩ませており、
かつて、小売店に売り上げ情報を政府に自動で伝える装置をレジスターに設置することを義務づけました。
それほど脱税対策に苦慮しており、それがキャッシュレス化推進の大きな誘因になりました。
電子決済では取引履歴が全て記録され保管されるため、不正を働くのが難しいからです。
スウェーデン政府は寄付をクレジットカードで受け取れる機器をホームレスの人たちに付与しています。
多くの教会もカード読取機を設置し、寄付金もクレジットカードで受領できるようになっています。
民間銀行の多くが、経費節減や強盗防止のために店舗での現金保有やATMを廃止していた経緯もあります。
一方、中央銀行であるリクスバンクも、銀行券発券業務のコスト削減の観点から
キャッシュレス化を強く推進してきました。
2015年10月から翌年6月までに銀行券と貨幣の切り替えを実施しましたが、
製造、輸送、管理コスト削減のため、サイズを縮小したり軽量化を図ったりしています。
このようにしてキャッシュレス化が顕著に住み、
それを背景に銀行デジタル通貨発行の議論が始まりました。
リクスバンクは現在のところ、世界の主要中央銀行中で中央銀行デジタル通貨について
最も具体的な構想を持っています。
その詳細は2016年11月にセシリアスキングレー副総裁が明らかにしています。
同副総裁の講演録の要約を参考に、リクスバンクのデジタル通貨構想を概観していきましょう。
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