もう少し現実に眺めて考えてみましょう。
実際には、大量の現金の輸送や貯蔵にはコストがかかるため、
小幅なマイナス金利の下では、銀行が中央銀行当座預金を取り崩して現金を大量に
引き出すといった事態が発生する可能性は小さいでしょう。
しかし、マイナス金利の幅がより大きくなりまた長期化する見通しが高まって、
マイナス金利で生じるコスト増が現金の保有、輸送コストを上回るようになれば、
銀行が日本銀行から現金を大量に引き出すといった方策をとることが考えられます。
その時日本銀行は、銀行が現金を大量に保有すると、この金額に見合った格好で、
日銀当座預金のなかでマイナス金利が適用される残高を増加させると言うペナルティーを
課し、現金保有の増加を牽制することができる制度となっています。
しかし、多くの銀行が同時に現金を引き出すようなことが生じた場合、
そのようなやり方ですべての銀行にペナルティーを課すことが本当にできるかどうかは
疑問です。
銀行全体の収益に大きな打撃となるからです。
他方、個人の場合には、現金の貯蔵コストが小さいため、
銀行預金の金利がわずかでもマイナスになれば、預金を取り崩して現金で持つ
「タンス預金」をする人が多くなるでしょう。
こちらは、実利と安全性を天秤にかけた判断となります。
預金を取り崩す個人顧客が増えた場合、銀行は中央銀行当座預金を取り崩して
現金を顧客に支払いますが、銀行自身が現金の保有を超過させるわけではないため、
日本銀行からペナルティーを課される事はありません。
中央銀行当座預金を減らしてマイナス金利を支払う負担を減らすことができます。
その分、マイナス金利政策の効果は殺がれることになります。
仮に銀行が個人向け預金の金利をマイナスにした場合には、
預金していると資産が目減りしてしまいます。
個人の間で銀行預金を取り崩してタンス預金する動きが強まるでしょうが、
金利0のタンス預金ならば価値が目減りする事は無いので、
無理に急いでお金を使おうと言う気持ちにもならないでしょう。
そうしてマイナス金利政策による消費刺激効果が減殺されてしまうことになります。
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