大韓航空「離陸遅延事件」が象徴する財閥経営の限界韓国では、
不可思議な事件が相次いで起こっている。
いずれも「人間がらみ」の暴走が生み出す事件である。
2014年4月の貨客船セウォル価号の沈没事故も船長の責任放棄であった。
もう一つは、 大韓航空のチョ副社長(女性)が引き起こした事件である。
大韓航空機が、2014年12月5日(米東部時間)ニューヨークのケネディー国際空港から
仁川に向かう滑走路を移動中、同機の従業員がマニュアル通りに出さなかったとして、
チョ副社長が乗務員を叱りつけた。
そのあげく、機体を引き返させてチーフパーサーを降ろし、航空保安法などに問われた一件である。
この事件の主役である大韓航空のチョ副社長は、大韓航空のファミリーである。
チョ氏父親で同社を傘下に持つ韓進グループのチョ会長が2018年12月12日
国民に正式に謝罪すると言う騒ぎに発展した。
──────────ナッツの出し方が悪い「朝鮮日報」(2014年12月12日付)は次の日に伝えた。
「チョ会長は『娘の愚かな行動で物議を醸したことに対し、心から謝罪する。
大韓航空の会長として、父親として国民に許しをこう』と述べた。
またチョ氏について、国土交通部や検察の調査結果にかかわらず、
大韓航空の副社長だけでなく別会社の代表取締役等グループの全役職を辞任させる方針を明らかにした。
今回の騒動の原因を尋ねられると『私が(娘の)教育を誤ったようだ。申し訳ない』と答えた。
迅速かつ適切に対処していれば事態がこれほど大きくなる事はなかったとの指摘には
『申し訳ない』と短く謝罪した」
この件は、財閥ファミリーの「わがままお嬢さん」副社長がいばりちらして、
航空法違反に問われたと言う単純な話である。
だが、韓国財閥の前近代性を象徴する話でもあるのだ。
韓国では約40の財閥グループが韓国経済を牛耳っている。
寡占体制である。
韓国の経済行動において近代化の障害になっている。
「出資と経営の分離」は、資本主義経済発展のイロハである。
出資と経営が分離してこそ丼経済の弊害が是正される。
明治時代の日本財閥は、財閥本家が経営に参画せず、「番頭役」に経営の舵取りを任せてきた。
三井住友は最初からそうだった。
三菱は少し遅れた。
「番頭経営」によって合理的な経営が可能になった。
日本財閥は、戦後に解体されるまで、専門経営者の合議制による経営が行われていた。
こうした日本財閥の経営から見ると、現在の韓国財閥はファミリーが経営の全権を握っていることがわかる。
今回のような「お嬢様」副社長が、気に入らないとして滑走中の旅客機を止めると言う暴挙は、想像
もできない事件である。
問題は、この事件が公にされた後の、大韓航空側の対応である。
もみ消しに躍起となった。
「中央日報」(2014年12月13日付)は、次のように報じた。
「パクチャンジン大韓航空事務長(41)が口を開いた。
5日(現地時間)に米ニューヨーク発仁川行きの大韓航空KEO86航空機に搭乗し、
チョ大韓航空副社長(40)の指示で飛行機から降りた人物だ。
パク事務長は、(チョ前副社長が)すぐに連絡して飛行機止めなさい。
私はこの飛行機を出させないと話した』とし「オーナーの娘である
その方の言葉に背けなかった』と話した」「パク事務長(注:チーフパーサー)は、
大韓航空側が偽りの陳述を強要したとも主張した。
パク事務長は、『報道があった後、大韓航空の職員5、6人がほとんど毎日のように来て
「マニュアルを熟知していないためチョ副社長が怒ったが、暴言はなく、
自分から降りた後(国土交通部の調査と検察の捜査で)話せ』と強要したと語った。
続いて、(彼らは私に)『国土部の調査担当者は大韓航空の機長か事務長出身だから、
調査といっても会社側と組んでやる花札賭博』と話し、心理的に(私の)萎縮させたりもしたと主張した。
また『その屈辱は体験してみなければわからない』と付け加えた」大韓航空機から
降ろされた事務長は、大韓航空職員から偽の証言をするように強要されていた。
その際、とんでもない言葉が出ていたのだ。
「(韓国政府)国土部の調査者は大韓航空の機長か事務長出身だから、
調査といっても会社と組んでやる花札賭博」と言い放っている。
実は、韓国の行政において最大の問題は、韓国財閥の強い影響受けていることだ。
財閥に勤めた社員が退職後、政府関係の部門に再就職しているケースが多いのである。
まさに官民の癒着が発生しやすい状況にある。
これまで韓国では55歳定年であった。
2015年4月から60歳に延長されたが、それでも日本に比べれば定年が五年も早いのだ。
年金制度が未だ不十分であることを考えると、再就職問題は死活問題である。
ここに、官民癒着が起こりやすい背景がある。
大韓航空の会社側が、「調査といっても花札賭博当然」とまで言い切って圧力をかける事は、
過去にもそういった実態の存在を証明している。
セウォル号沈没事件との共通点は、官僚が運行会社と癒着していたことである。
本来すべき定期的な検査を怠っていたこと。
貨客船出帆の30分前に貨客乗船を締め切るべきところ、
出帆間近まで乗船させる法律違反を繰り返していた。
要するに、厳格に守るべき規則をないがしろにしていたのだ。
今回の航空法違反でも、大韓航空側が官民癒着をうかがわせる発言をしている。
他にもいろいろあったのである。
韓国社会で規制が法律通りに守られない背景には、官僚が手心を加えていることが影響している。
これは、中国社会同様に「家産官僚制」と言う恣意的な行政が行われていないことを指している。
中国も韓国も儒教社会だ。
法治でなく人治の社会である。
規則通りに物事を取り運ぶことが「人情味のないこと」と受け取られる。
法律を曲げても、相手側の要望に応じる。
これが「人の道」であると言う、社会通念となっている。
韓国の歴代大統領が退任後、汚職事件で告発されている。
李明博前大統領も例外でない。
大統領本人、あるいは親族縁者が取り調べを受けている。
これは、儒教社会独特の習慣が災いしている。
1族から顕官(地位の高い官僚)が出るとそれを頼りにしてきた場合、
経済的な面倒を見ることが暗黙の「礼儀」とされる社会である。
1種の馴れ合い社会だ。
規則通りにことが運ぶのが、「近代官僚制」である。
これは、ドイツ人社会学者のマックスヴェーバーが言ったように、
近代国家の骨格を決める極めて重要なバックボーンである。
前近代的な諸国(多くは発展途上国)が賄賂汚職の多発している原因はこれである。
韓国社会は今、大きな問題に揺れている「人治社会」特有の派閥争いを始めているのだ。
パク大統領周辺者とパク氏の実弟派との派閥争いが起こっている。
朝鮮王朝がかつて、日本派、清朝派、ロシア派と分かれてそれぞれ勢力争いをしていた。
これが、日韓併合の裏に隠されている秘話である。
日本派が自らの勢力拡大を策して、日本を味方につけて併合へと持ち込んだのである。
日本側だけの事情によって併合に動いたわけでもない。
その手引きした派閥が朝鮮側に存在した。
ただ、日本派には朝鮮の日本的な外に開かれた国家にしたい。
こういう強い理想を掲げていた事実があった。
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