「ブルームバーグ」(2015年7月14日付)は、「中国が世界的にセッションを起こす恐れ」と題して、
次のように伝えた。
「靴や玩具など輸出品の事は一切忘れよう。
中国は近く世界にリセッション(景気後退)と言う別のものを提供するかもしれない。
それがモルガンスタンレー、インベストメント、マネージメントの新興市場責任者、
ルチルシャルマ氏の予想だ。
同氏は中国の景気減速が今後数年続けば、世界の経済成長率は2%を下回る可能性があると指摘した。
同氏は成長率2%割れを世界的リセッションに相当する水準と見ている。
現実となれば、過去50年間で初の、米経済がマイナス成長に陥らない中での世界的リセッションとなる」
2014年10月、米国の中立的な景気予測機関コンファレンスボード(創立1916年)は、
中国経済についてショッキングな予測結果を発表している。
私の中国経済予測は、このコンファレンスボードとIMF (国際通貨基金)予測を基礎にしている。
それによると、中国経済の本格的なリセッションは2017年から始まる。
日本の「平成バブル崩壊」後遺症も、崩壊後2から3年経ってから誰の目にも明らかになった。
中国の経済成長率は、2015年が6.8%、2016年は6.3% (いずれもIMF予測)。
2017年以降は3%台へと落ちた後、ずっと「鍋底景気」の3%台が続く(コンファレンスボード予測)。
こうした中国経済の低成長路線は、労働力不足とバブル崩壊後の不良債権処理が、
重くのしかかる不可避的な結果である。
あれだけのバブルを引き起こしながら、今後の成長率が「無傷」であるはずがない。
それが、経済常識と言うものだ。
過去30年代の超高度成長過程で、バブルの芽が生まれ育てられていたのである。
それが潜在成長率以上の成長率へと押し上げてきた。
過去の「過剰成長率分」は、今後のバブル崩壊によって、逆に今後の成長率が下方調整される局面となる。
故に、成長率は3%台に低下しても不思議はない。
以上の部分を、少し原理的に説明すると次のようになる。
不動産バブルによって「固定資産投資」を膨張させてきた。
それが、経済成長率を引っ張り上げたのだ。
だが、バブル崩壊によって固定資産投資の増加率が鈍化する。
その鈍化した部分が、ストレートにGDP成長率に影響してGDP成長率を小幅にとどめる。
これだけではない。
不動産バブル崩壊は、債務返済が滞って不良債権を発生させる。
それが、金融機関の新規貸し出しへブレーキとなって、中国全体の資金循環に負の影響を与える。
これも、GDP成長率の足を引っ張るのだ。
かくしてシャルマ氏が次に指摘するように、成長率が「2ポイント」低下するのだ。
「シャルマ氏は「次の世界的リセッションは中国によって引き起こされる」と予想。
「今後数年にわたり、中国は世界経済にとって最大の脆弱要因となる公算が大きい」と語った。
また、中国が債務削減にてこずる中、中国経済は引き続き減速すると予想。
さらに2ポイント成長が鈍化すれば、世界はリセッションに陥るとの見方をしめした」
前のパラグラフで、私が指摘した点はシャルマ氏の予測によって論証されると思う。
氏は、世界経済のリスク要因として中国を上げている。
原因は、「債務削減」としている。
この言葉の中に、はっきりと「バブル崩壊」と言う意味が込められている。
バブル(不動産と株式)が崩壊したから、債務は「過剰債務」に変わったのである。
マッキンゼー国際研究所の推計では、中国の総債務高の対GDP比率は282% (昨年4から6月期現在)である。
韓国は、同286%だ。
中韓は揃って「過剰債務大国」として世界一(韓国)と二位(中国)と言う不名誉な記録を持つに至った。
中国の経済成長率が、「2ポイント」低下すれば、「世界はリセッションに陥る」との見方を示している。
つまり中国が5%成長ラインを割れば、世界はリセッションに落ちるとの指摘である。
中国の輸入が減るからだ。
昨年、中国の輸入は前年比15.5%減である。
今年6月も前年比6.7%減少だ。
じわじわと対中輸出率の高い国の経済には影響が出始めた。
シャルマ氏は、中国経済減速による株価への影響が強く出る国として、ブラジルやロシア、
韓国を敬遠している。
韓国経済が、中国から大きな負の影響を受ける。
これはすでに「常識」となっている。
韓国経済は、自らの不手際によって経済減速度を速めている。
2014年の貨客船沈没事故のほか、2015年はMERS(中東呼吸器症候群)によって、
消費へ大きな影響を受けている。
今年のGDP成長率は、2%代前半まで落ち込む懸念が強まっている。
前記の通り、2年続きの不手際に加えて、中国向け輸出の不振が重石となった。
韓国経済は先行きへの不安感による閉塞感が強くなっている。
私はこれまで、国内要因を中心にして韓国の経済減速を取り上げてきた。
だが、今指摘したように中国経済の不振が加わると、韓国は完全に「逃げ場」がなくなる。
「四面楚歌」となるのだ。
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