失業率の推移を韓国統計上「一般雇用動向調査」で見ると、
2010年代に入ってから4%に届いたことがない。
素晴らしいと言うほかない。
11年10月は2.9%まで落ちた。
ケインズが説いた「完全雇用状態」だ。
この数字が発表された直後、「韓国に長期出張していたが、私の実感では、そんなに低いはずがない。
韓国政府お得意のデマ数字だ」と指摘するビジネスマンに会った。
同じように思う日本人は少なくないようだが、私はそれなりに正しい数字だと考える。
韓国の失業率統計は、日本とほとんど同じ基準、手法で調査されている。
15歳以上の経済活動人口(労働力人口)に対する完全失業者の割合であり、
①調査期間(1週間)中に1時間でも働いて賃金を得たもの、
②家事手伝いを行っているもの、
③勤労意欲がないもの(学業者を含む)
──────────などは失業者にカウントされない。
①と③が問題だ。
職安(日本ならハローワーク)に行き、仕事を紹介されるわけだが、極端なことを言えば、
昨日までソフトウェアの開発に取り組んでいた若者が「公園の便所掃除」を斡旋され、
1日だけ1時間その仕事したとしても、①にカウントされる。
それを初めから断ったら、③になってしまう。
長年にわたり同じ基準で取り続けている統計数値は、それなりに貴重だ。
しかし日本でも韓国でも、「政府統計上の失業者」になろうと思ったら、これは難しい。
失業率の統計とは所詮そんなものなのであり、規定の基準に従って厳格に算入した結果、
「事実上の完全雇用状態」を示す数字になってしまった、と言うことなのだろう。
私は失業率より就業者率(雇用率)のほうに実用性があると思う。
これは労働力人口に対する就業者の割合だ。
ところで、日本のマスコミは失業率と有効求人倍率にばかり着目し、
就業者率はほとんど無視している。
何故だろうか。
米国の失業率報道が株価に敏感に反映することの影響だろうか。
いや、これは単なる惰性と怠慢のためだ。
韓国が「完全雇用状態」と言える失業率2.9%を記録した11年10月、
就業者率(15から64歳基準)は59.9%だった。
ちなみに、同時期の日本の失業率は4.5%、就業者率(同基準)は70.6%だった。
韓国の失業率は、日本に比べて低いだけではない。
欧米OECD (経済協力開発機構)加盟34カ国の中でも1-2を争う低さだ。
世界に冠たる「失業率の優等生国家」であることが明らかだ。
しかし、加盟国の中で就業者率を見たら、下から数えた方が早い。
「財政危機に苦しむ国々は、いずれも雇用率が低いと言う点で共通している。
ギリシャ59.6%、アイルランド60.4%、イタリア56.9%、スペイン59.4%等はいずれも雇用率が低く、
OECD平均64.4%を下回っている。
もちろん韓国よりも低い」(朝鮮日報11.11.2)これは、目のつけどころの良い記事だ。
ただし最後の一言は「実は韓国も同類だ」の誤りだろう。
韓国の失業率は12年9月2.9%、10月2.8%、11月2.8%、…、と快進撃を続けている。
しかし日本と韓国の12年11月の失業率を比べてみるとどうか。
▽韓国失業率 2.8%、就業者率59.7%
▽日本失業率 4.0%、就業者率71.1%
どちらが好ましい姿だろうか。
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