序章で触れた通り、欧米、ことにアメリカにおけるフィンテックは、
反銀行的な世論の後押しも受けて、強く銀行と敵対する形、
いわば破壊者として成長してきました。
一方、日本には反銀行の機運はなく、また、フィンテック企業が立ち上がってきた時期と、
金融機関がフィンテックを積極的に取り入れ始めた時期が近かったこともあり、
メガバンクのフィンテックへの初期の対応は、融和的であったといえます。
邦銀にとってのフィンテックのイメージは、革新的なサービスで既存の金融機関の
業務領域を侵食するライバルと言うよりも、
業務を効率化したりコストを削減したりする新しい技術と言うものだったと思われます。
フィンテック企業によって実現されたサービスのほとんどは「利用者目線」に立ち、
使いやすいと評価されています。
一方、法規制に縛られる反面、厳しい競争を強いられることもなく、
顧客ニーズに鈍感になっていた銀行は、それらのサービスに利用者の支持が
集まっていることを銀行の既存のサービスへの不満の表れと受け止めたのでしょう。
フィンテック企業の台頭に対する銀行の最初の反応の1つが、
フィンテックで可能になった新サービスの提供ではなく、
既存の全銀システムの稼働時間拡大であった事は、それを端的に示しています。
2016年の銀行法改正で5%ルールが緩和されたことも、
邦銀とフィンテック企業が融和的であったと言う文脈で理解することができます。
5%ルールの緩和は、フィンテック企業が金融業務へ参入しやすくなる
と言うものではなく、金融機関のフィンテック企業への出資を促すものでした。
金融機関は出資によってフィンテック企業のサービスをグループ内に
取り組むことができるようになります。
フィンテック企業の側にも、銀行の出資を受け入れたり買収されたりすることを、
エグジット(投資した資金を回収する手段)として歓迎する傾向があったのです。
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