仮想通貨が投資対象として注目を集めている背景には低金利の長期化と言う
金融市場の状況があります。
2008年のグローバル金融危機を機に、先進国では潜在成長力が低下し、
低インフレの長期化あるいはデフレも懸念される事態に陥りました。
対応策として、日米大手国債の大量買い入れなどを柱とした金融政策が実施され、
各国の金利は歴史的低水準に立ちました。
そうした状況下では、国債の利率もゼロに近づき、
国債投資からほとんどインカムゲイン(利息収入)が得られません。
投資家は、国債よりリスクが高くてもそれに見合った高いインカムゲインが
得られる債券に投資する傾向を強めていきました。
その一例が、投機的な格付けで信用リスクの高い社債、
いわゆるハイイールド債への投資の拡大でした。
高い利回りを追求するこうした投資行動は、「サーチフォーイールド(利回りの追求)」と
呼ばれています。
ところが、多数の投資家がそうした行動に走ったことで、
債権の金利は一段と低下してしまいました。
信用力の高い国債と信用力の低い社債との金利差、いわゆるスプレッドが
これまた歴史的な低水準に対し、投資家がインカムゲインを得る機会は
さらに低下してしまったのです。
金融資産への投資では通常、インカムゲインのほかにキャピタルゲイン(売却益)も
収益の源泉になります。
恋しかし、こうした超低金利の局面ではボラティリティーが極端に低下し、
キャピタルゲインを得るチャンスも失われてしまいます。
投資家はどちらの収入も得る機会を失い、八方塞がりに陥りました。
それでもハイリスクハイリターンを目指す投資家は、
なんとしても短期的なキャピタルゲインを稼ごうと、ボラティリティーの高い資産を
探し始めます。
「サーチホイールド」の投資行動は「サーチフォーボラティリティー」の行動へと
進んでいきます。
そこで彼らの注目を集めたのが、ボラティリティーの高さを特徴とする仮想通貨でした。
多くの投資家が市場に参入し、仮想通貨の市場規模は急激に拡大しました(図表2-3)。
仮想通貨が高いボラティリティーを持っているのは、他の金融資産との価格連動性が弱く
裁定関係が働きにくい、いわば異質の存在であるためです。
同じリスクに対してリターンの大きさがどの程度になるかを示す仕様である
シャープレシオで見ると、ビットコインは他の金融資産に比べて大きいとの
分析もあります。
その分析が妥当だとすれば、ビットコインへの投資は合理的な投資行動だと
見ることができます。
ただし、仮想通貨取引の歴史は浅く、ビットコイン投資のリスクとリターンの関係を
正確に計測するのに十分なデータが揃っていない事は留意しておくべきでしょう。
本章での仮想通貨についての言及はここまでとし、仮想通貨投資が今後
どのような展開を見せるのかについては、第6章で詳細に検討することにします。
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