OECD (経済協力開発機構) が2016年に実施した16歳から74歳までを対象とした
調査によると、日本人のインターネット利用率は98.0%で調査対象38国中第2位でした。
そのような状況ですから、日本はIT先進国であると理解されている読者も多いと思います。
しかし、年齢層別やIT利用分野などカテゴリー別にIT親和度を詳しく見ていくと、
必ずしもIT先進国とは胸を晴れない実態が浮かび上がってきます。
例えば年齢層別のインターネット利用率では55歳から74歳の利用率は76.6%と低く、
中高年齢層への浸透では必ずしも高いとは言えません。
また、クラウドコンピューティング、e-ラーニング (オンライン上での学習)、
e-ガバメント(電子政府)の利用状況は世界と比べると非常に遅れているのが実情です。
世界中で、クラウドコンピューティングの利用が急増しています。
クラウドコンピューティングは、ネットでつながっている多くの高性能コンピューターが
収蔵するソフトウェア情報を利用者が所有するパソコンやスマートフォンなどの端末で
利用できる仕組みです。
自分が使っている端末の性能が低くても、
様々なことができるメリットがあり、文章や画像、音楽、動画などを保存したり
他者と共有したりするのに便利です。
OECDの同じ調査では、クラウドコンピューティングの利用率はスウェーデンの48%が
最高で、ノルウェー、オランダの欧州諸国が高位を占めています。
日本の利用者比率はわずか7.1%で、調査対象国中最下位でした。
ちなみに各国とも若年層と高学歴層の利用比率が相対的に高いと言う傾向があります。
e-ラーニングとe-ガバメント利用率でも日本は後進国です。
e-ラーニングでは調査対象国全体でインターネット利用者の9.7%が
過去3カ月の間に利用していたのに対し、日本は3.4%でこちらも最下位でした。
e-ガバメントとは、例えば、所得税の電子申告や住民票の電子申請のように、
政府や自治体のウェブサイトにアクセスし、情報をやり取りするシステムです。
こちらも、北欧諸国が軒並み50%と効率で、トップのデンマークでは
70.9%に足していますが、日本はわずか5.4%で最低レベルにあります。
モバイル決済等、経済のデジタル化には、利用者となる個々の基本的なITスキルの習熟が
欠かせませんが、その点でも日本は世界のトップグループから水をあけられています。
基礎的なITスキルについて、比較的容易な電子メールの送信などの通信と情報検索
(CIS:コミニケーション&インフォメーション、サーチ)のスキルと、
少し高度なワードプロセッサやスプレッドシートなどのソフトウェアを使いこなす
(OPS:オフィス、プロデュースティブ、ソフトウェア)スキルに分けて、
OECDの調査を参考に日本の現状を確認しておきます。
CS Iのスキルを持つ人の割合は、2012年のOECDの調査で、
調査対象国20カ国の平均38.4%に対し、日本は31.3%、
OPSは平均25.5%に対し22.4%で、いずれも下位グループに甘んじています(図表3-2)。
上位のノルウェーオランダでCISが50%を超えるのと比べると、
大きな差であると言わざるをえません。
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