物品やサービス、金融資産などを得る際に、購入者が対価として大金を払って
取引を完結させること、また、それによって当事者間の債権、債務関係を
解消することを、資金決済といいます。
資金決済後、銀行間や企業と銀行間のそれは大口(ホールセール)決済、個人と企業、
銀行などの間、あるいは個人間で行う資金決済は小口(リテール)決済と言われています。
使用国の大口決済を見ると、経済社会を支えるインフラとしての
大口資金決済システムを中央銀行が自ら運営しているのが一般的です。
日本では日本銀行の日銀ネットがその役割を担っています。
詳細は前述の通りです。
それとは対照的に、各国の小口決済の制度はその国の経済、社会、文化、慣習、
歴史などによって千姿万態です。
結果、小口決済の安定性を確保するための中央銀行の方策には各国で大きな違いがあります。
一方、仮想通貨やモバイル決済など、近年の小口決済の新しい動向への関与のあり方は
各中央銀行にとって共通の課題となっています。
現金志向が強い日本の小口決済の特徴はどこにあるのか。
2017年2月日本銀行が発行した「BIS決済統計から見た日本のリテール、
大口資金決済システムの特徴」と言うと言うレポートに基づいて、
諸外国と比較しつつ日本の小口決済の特徴を明らかにしてみたいと思います。
国際比較した場合、日本では現金志向が強く、それが日本の小口決済の
最大の特徴である事は前述しました。
その理由も指摘しましたが、他の決済手段と比較して改めて考えると、カード決済、
特にクレジットカード、デビットカードによる決済よりも、
現金決済が好まれる傾向があるようです。
事実、使用国の現金流通額とカード決済残高の対名目GDP比率には明確な逆相関があります。
日本のように現金流通額の比率が高い国ではカード決済残高の比率が低いと言う関係があります。
日本の小口決済の特徴を挙げましょう。
①持っているけど使わない?各種カードの保有数や利用状況には興味深い数字があります。
日本のカード決済残高の対GDP率は諸外国の中で平均レベルにあります。
にもかかわらず、各種カードの一人当たりの平均保有枚数が多いのです。
平均保有枚数は7.7枚で、主要国の中ではシンガポールに次いで2番目の多さです。
内訳はクレジットカード、デビットカード、電子マネーなので、
一人当たりの保有枚数はいずれも平均2枚を超えています。
ただし、デビットカードは事実上キャッシュカードとして使われる使われていると思われます。
日本のキャッシュカードの多くにはデビットカードとして利用できるJ-Debit
(ジェイデビット)の機能が漬けられていますが、
その機能を持つキャッシュカードは全てデビットカードに分類されるからです。
日本のデビットカードによる決済金額のGDP比率はほぼゼロです。
日本銀行のレポートは、クレジットカードの保有枚数が主要国平均を
大きく上回っている理由を4つ指摘しています。
①クレジットカード発行に伴う審査が他国に比べ日して厳しくなく、
カードを持つこと自体のハードルがさほど高くない、
②各クレジットカード会社が入会特典の付与などを通じて
発行枚数を増やすよう努めている、
③複数のクレジットカードを持っている個人はそれぞれのカードの
ポイントサービス等に応じて、店によってクレジットカードを使い分けている—。
心当たりのある読者も多いと思います。
他方、クレジットカード決済額が大きくないのは、
小額決済には現金や電子マネーが好まれ、クレジットカードが高額決済を中心に
利用される傾向が多いためです。
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