日本では支払いに現金を使うことに多くの人が不便を感じていないため、
スマートフォン決済やクレジットカード決済など現金以外の小口決済が急速に普及する
環境にはありません。
しかし、日本で暮らす大半の人々が不便や不快を感じることなく
を使うことができるようにするためには、実は大きなコストがかかっています。
1部の関係者以外ではそれを認識している人は少数なようです。
現金流通のコストは多岐に渡りますが、直接なコストに限ると、
紙幣を印刷し硬貨を製造するコストを、保管したり輸送したりするコスト、
現金を取り扱う人件費、ATMの製造費と維持費などがあります。
それらのコストの大部分は日本銀行と民間銀行が負担していますが、
最終的には大半が現金の利用者、つまり日本に住む人々や訪日旅行者に転嫁されています。
日本銀行の収入は国債や手形、貸出金などの保有資産の利息が中心で、
そこから独立行政法人国立印刷局が製造する紙幣や財務省が製造する硬貨の
購入費や人件費等を出しています。
その経常利益から税金、配当等を差し引いた剰余金の大半は、
国の歳入となる国庫納付金として国に納めます。
つまり、紙幣の印刷代や硬貨の製造費など現金流通に必要な経費の分だけ、
国の収入は減ります。
国の収入が減ると言う事は、その分の税金が必要になるか、公共サービスが削減されると言うことです。
要するに、日本銀行は現金流通に費やすコストは日本で暮らす人々が負担していると言うことです。
また民間銀行が現金流通のために支出するコストは、
ATMの手数料等に転嫁されていますから、利用者が負担していると考えられます。
日本で暮らす人の多くは、小口決済に現金を利用することに何の不満も感じていませんが、
その一因は、現金を利用するためにいかほどのコストがかかっているかを
十分に認識していないからだと思われます。
日本銀行は、多くの人が現金を扱うことを望む限り、
全国に現金を遅滞なく郵送したり、紙幣の見た目の美しさを維持したりすることによって
その利便性をさらに高めることが勤めだと理解してるようです。
そうした取り組みが、人々の現金思考をさらに高めると言う循環が生まれています。
しかし実は、人々がそうしたコストを十分に認識した上で、
現金の利便性の費用対効果を適切だと考え、現金中心の小口決済の状況を支持していると
言うのでなければ、日本銀行の取り組みは必ずしも人々の利益に資するとは
言えないのではないでしょうか。
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