では、現金を流通させるためのコストは、一体どのくらいなのでしょう。
現金利用のコストを正確に把握することは容易ではありませんが、
ボストンコンサルティングは日本の金融界がATMを維持管理するコストを
年間7600億円程度と試算しています。
その他、現金輸送や取扱事務に係る人件費などを考慮すると、
日本の金融界全体で年間年間2兆円程度のコストというのが同社の見方です。
それはGDPの0.3%に相当する規模です。
一方、米国のタフツ大学の研究チームの試算によると、
米国の現金のコストは年間2000億ドル以上に達するといいます。
1ドル110円で計算すると22兆円です。
米国の家計の平均(中央値)所得の3.3%、2013年のGDPで計算すると、
名目GDP比1.2%に達します。
タフツ大学の研究では、現金のコストをかけ、企業、政府の3部門に分け、
それぞれのコストを推計しています(図表4-4)。
家計にとって大きなコストは時間の消費だとしています。
ATMで現金を引き出すために消費する時間が平均毎月28分で、
平均賃金で機会費用を計算すると年間310億ドルに上ります。
ATMの手数料80億ドル、小切手を現金化する手数料なども加えると、
現金に関連する手数料は全体で年間430億ドルです。
ちなみに年間の盗難などによる個人の被害総額は5億ドルですから、
430億ドルは格段に大きな額です。
企業部門のコストは年間550億ドルで、550億ドルで、
うち400億ドルは小売業界の現金盗難被害の総額です。
監視ビデオ、警備員、特殊金庫、武装車両等盗難防止に必要なコストもあります。
小さな企業では、現金等の取扱事務の人件費も小さくありません。
政府部門のコストは1010億ドルで、家庭や家計や企業の倍以上と見積もっています。
内訳には、硬貨や紙幣の製造、輸送などのコストも含まれますが、
それは年間12億ドル程度で、政府部門のコストの大半は、
現金を使っての税金逃れ等による税収減だとしています。
研究チームは税収や政府 による種々の規制を逃れた地下経済の規模は
年間2兆ドル程度に及ぶと試算しています。
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