日本の銀行は個人から預金を集め、資金不足の企業に貸し付けると言う資金を
仲介する役割を長く担ってきました。
その役割には、重要産業に優先的に資金を貸し出すといった形で
戦後の産業政策の一翼を担うなど、政府の影響を強く受けた時期もありました。
しかし、1990年代前半のバブル経済崩壊の後、銀行の置かれた状況は一変しました。
バブル景気の反動で生じた需要減で機能は過剰設備の問題に直面し、
投資が大幅に落ち込みました。
銀行から見れば、最大の収益源であった企業向け貸し出しが大きく低迷したのです。
それと同時に、バブル経済の中で不動産等に対して行った過剰融資額について
不良債権となり、その損失計上したために、収益が大きく悪化しました。
その結果、銀行は優良企業向けに貸し出しを抑える貸し渋り傾向を強め、
これが景気の低迷を助長しました。
過剰設備問題や不良債権処理といったバブルの敗戦処理は、
2000年代に入って徐々にメドがついてきました。
しかし、銀行が健全性を取り戻してからも、景気情勢が大きく好転する事はありませんでした。
そうした中、緩やかながらも
物価が低下を続ける状態つまりデフレ状態からの脱却こそが
日本経済の再生には欠かせないとの見方が世間に広がり、
そうした下で、著しい低金利を常態化させる金融政策もとられてきました。
一方、少子高齢化が進み、年金、医療などの社会保障費が膨らみ続ける中で、
国債の大量発行が続きました。
預金は集まり続けるが貸出先がないと言う状況にあった銀行は、
余った預金を運用するために国債を大量に購入しましたが、
低金利の下ではそうした運用益も低水準にとどまりました。
2013年4月からは黒田東彦総裁が率いる日本銀行が「異次元の金融緩和」と名付けて
国債の大量買い入れを始めました。
銀行は保有する国債を日銀に売却し、受け取った代金を日銀当座預金として保有しています。
日本銀行は、銀行から低金利で安全資産の国債を買い取ることを通じて、
銀行がより高金利のリスク資産を保有するよう促すことを目指しました。
ここで言うリスク資産とは、貸し出しや株式、社債等です。
そうした効果をポートフォリオリバランス効果と言いますが、
実際には銀行が保有する低金利で安全資産の国債が、
同じく低金利で安全資産の日銀当座預金に変わっただけでした。
日本銀行が期待した銀行のポートフォリオリバランス効果は、
実際には生じなかったのです。
このことはまた、銀行の収益性も改善しなかったことを意味します。
貸し出しは相変わらず低迷している上、2016年2月のマイナス金利の導入
(日銀当座預金の1部に適用)に伴って貸出金利や国債の運用率も下がり、
銀行の収益はますます厳しくなっています。
結局、バブル崩壊から30年近く経過しても、銀行の収益構造は変わっていません。
銀行は、経済の変化に対して収益を維持拡大するビジネスモデルを
打ち立てることができなかったのです。
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